第113話 ラッパオ集落

 ラッパオ集落。

 集落っていいつつ、建物が3つしかないんだって。

 1つは地上にあって、あと2つは大きな木の枝が複雑に絡んだ、その上にあるんだ。

 木の上のは、リッテンド集落にあった木のおうちよりデカい。

 枝の上って言っても1本の枝じゃなくて、複数の木が絡み合って枝がいっぱい組み木みたいになってるようです。で、その枝を使って床の台にして、でっかい家になってるんだ。

 よくこんなスペース木の上にあるなぁ、って感心したら、なんのことはない、枝打ちして必要なスペースをつくるんだって。良い感じに複雑に枝が寄っている場所に枝打ちして穴を開けて、その間引いた枝も使って家をつくるそう。

 ちなみに中はワンルーム。てか、だだっ広い空間です。

 これは寝るための家で男女別になってるんだって。


 地上の家は共同スペース。

 ご飯食べたり、話し合いをしたり、訓練や勉強なんかも全部ここ。

 こっちには椅子やらテーブルなんかもあり、小部屋もあるみたい。

 余所からきた人の宿泊スペースとかにも使うみたいだけど、特にこれって使い道が決まってるわけじゃないんだって。


 なんで、おうちがこんなに少なくて質素なのか。

 そんな疑問が僕の顔に出てたんだろうね。

 ラッパオ集落は移動するんだ、そうです。


 さっき樹海の中で出会ったのは、主に外見がほぼエルフの4人だったけどね、この集落には、僕らみたいな人族もドワーフや獣人もいて、どうやらセスの中でも特殊な集団らしいです。

 ていうのは、樹海の異常を感知して知らせる斥候特化の集団、なんだって。

 で、今ここを集落にしてるのは、ちょっと前からユラユラの空間が出来てたので、その見張りのために一応樹海の外に当たるこの場所に集落を作った、ってことらしい。

 どうやら、ほとんどのユラユラは、すぐに消えちゃうけど、ものによっては年単位で存在することもあるんだって。

 結界のすぐ側に出来たなら、攻撃したりして、なんとか消そうと頑張るけど、ある程度奥だと、戦力をそこまで避けないから、放置して観察するんだ。で、観察してれば黒いドロドロの魔物が発生しても、すぐに分かるし、発生しかけってんなら対処が簡単ということで、ラッパオみたいな集団が見張る、ってことになるそうです。



 ここのユラユラに気付いたのは1旬ほど前のことだったらしい。

 ラッパオとは別のセスのチームで、探索隊って言われる人達が見つけたみたいなんだけどね、樹海を探索する探索隊が2回通ってまだあったら、ラッパオみたいな集団が近くに集落を作って見張ることになるそうです。

 セスを知ってそこそこ長いけど、こういう運営法っていうのかな?実際のあり方って初めて知ったよ。


 ラッパオは、魔力感知に長けた人や、匂いに敏感な人、逆にそれらに鈍感な人が集まった集団なんだって。

 なんで鈍感な人がいるかっていうと、敏感すぎて役に立たないことがあるから。むしろ鈍感で強い人の方が有利な魔物とか、場所があるんだそうです。

 確かに、匂いに敏感な人が、くっさい場所で戦うのは不利でしかないよね。



 ちなみに、デンマーさんが率いていた4人のチームは、魔力に敏感さん、の集まりだったみたいです。

 で、僕が、バンバンって土魔法を撃ちまくったから、すわユラユラの近くに異常魔力発生だっ!って、やってきたそうです。ハハハ、ご迷惑おかけして、ごめんね。しかも、どうやらグレンの匂いってのかな、それも、この4人とは別の、匂いに敏感な人が指摘してたらしく、グレンの姿を見るなり、矢をいることになったみたい。

 セスって、僕が思っていたよりすごいのかも・・・

 そうそう。グレンの匂いに気付いたってのは、獣人の戦士、なんだけどね、グレンと意気投合して、なんだか楽しそうに模擬戦?やってます。

 生憎、念話はできないみたいだけど、グレン側は言葉が分かるし、なんだろう?会話が通じてるんだよね。不思議だ・・・




 僕たちが、のんびりと樹海からラッパオ集落へと移動中、どうやら僕らのことを伝達されていたようです。

 着くなり、ジュースだおやつだって、用意されてたよ。

 セスってば子供が少なく、とっても大事にするんだよね。

 そんなこともあって、次から次へと戦士な男女が僕を見たり触ったりしたくてやってきちゃう。

 男女とも、エルフはべっぴんさんが多いし、獣人は筋肉もりもりの毛皮ふっさふっさで恰好いいんだけど、なぜか、もっさい人族のおじさんが、アイドルの握手会を仕切る人、みたいになって、みんなを並ばせてるよ。

 むきむきのおじさんは、なんとなく冒険者によくいる雰囲気だし、安心するっちゃするんだけどね。お金、ではないか・・・いろんな物、魔石とか小物とか食べ物とかを要求するのはどうか、って思うんだ。


 あとで知ったけど、この人族のおじさんテムさんは、この集落のリーダーなんだって。

 なんかね、人族がいるとリーダーにしたがるらしい。もともとセスのもとである英雄のセスさんは人族だったってこともあって、集団に人族、や、みかけ人族がいれば、無理矢理にでもリーダーやらされる、んだそう。

 ていっても、これはテムさんが言ってることだし、正直、完全には信じることは出来ないけどね。テムさんってば、いい意味で、いい加減なことを言っちゃう冒険者、っぽいんだもん。

 テムさんも純粋な人族じゃなくて、エルフとドワーフの血もちょっと入ってる、らしい、いかにもセス、な人。ちなみにお母さんも、もともとこのチームのリーダーだったそうで、人族云々は、嫌がるテムさんにリーダーを押しつけるためのテキトーなお話し、なのかもしれないね。



 こんな感じでわちゃわちゃしてると、表がなにやら賑やかになったよ。


 

 「あらあら、本当にダーちゃんじゃない。一体どうしたの?」

 慌てて迎えに行ったテムさんや、この集落の有力者に囲まれて入ってきたのは、ウィンミンさん。つまりはアーチャのお母さんが、どうやら知らせを受けて駆けつけちゃったようです。

 い、いつの間に・・・?

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