第110話 異空間から異空間へ
早い速いはやい!!!
グレンの(多分)本気の疾走。
よくぶつからないもんだなぁ、と、目の端を流れる木々を眺めて、僕はワクワクです。
いや、はじめはちょっと参ったけどね。
だって、風で息が出来ないんだもの。
でも、僕だっていっぱい成長してます。
液体と気体の差はあれ、周りの分子から遮って、呼吸できる空間を作るなら・・・
以前、湖の中を行かなくちゃならい時があって潜水魔法を作ったんだ。
なんのことはない、身体の周りに空間を作るんだけどね、息がずっと出来るように常に周りを空気と同じ配分にしておくのがミソ、なんです。
で、あのときと同じに身体を囲ったら大丈夫みたいでした。
考えてみたら、これに近いもので、宙さんの空間に滞在してるのかも。あっちはほぼ無意識なんで、ちょっと魔力の質は違うような気もするんだけどね。
でね、僕の周りを囲もうとしたら、グレンまで入っちゃたんだよね。まぁ背中に乗ってるし、しょうがないか。
始めはグレンもちょっと動きにくそうにしてたんだけど、すぐに慣れて、いつもよりはやく走れる、て大はしゃぎ。
どうやら空気抵抗がグレンからもなくなっちゃって、いつもの1割から2割増しで速く走れているようです。って言っても、いつもの本気の速さ、なんて知らないけどね。
そんなこんなで、めちゃくちゃ速く森の中を走ってます。
ドップラー効果のパクサ兄様の声を無視しつつ、ランセルの巣になっている、小さなダンジョンへと向かいます。
人間なら歩いて2時間近くかかるかも。
僕がいなきゃ、その半分ぐらいでうちのメンバーなら走って来ちゃうかも、だけどね。
でもでも、グレンの空気抵抗を減らした走りで、たぶんその4分の1である、15分ぐらいしかかかってないみたい。あ、ちなみに、前世換算ね。今の世界ではそんなに細かく時間を計らないから。
といっても、僕の周りでは割と細かく時間を計ったりします。なんせ地球の記憶持ちが多いから、なんとなく、細かいのかも。
最初はね、ひいおばあさん、料理が苦手で、その半分は火加減だろうってなったそうです。で、ひいじいさんとカイザーで、精密な砂時計をつくったんだって。当時近い物はあったけど、砂時計のくびれのとこがデカすぎて、あんまりちゃんと計れなかったんだって。
そこで地球クオリティーの砂時計をキッチンタイマーとして作ったらしいです。おかげで、料理のクオリティーは爆上がりした、とか、しないとか。
そのおかげで、僕の記憶にある限り、砂時計はそこそこ製品化されてます。
でも、ザ・ナッタジ・クオリティーの砂時計は、他より質が良いので有名なんだ。これもママになってからの、復活品、ていうか、以前は注文生産のみだったらしい。今では、商品棚に普通に並べてるよ。
ま、そんなこんなで、こっちの感覚では、あっという間に到着した僕ら。
ランセルたちに挨拶しつつ、ダンジョンの奥まで進みます。
最奥の、その向こうに結界があって、コアと、森の精霊様が。
精霊様、ちょっとデカくなった?まぁ、いいや。
どうやら、僕らにくっついてきてた森の妖精たち、まぁ丸いキラキラだね、彼らから知らせがいっていたようで、森の精霊の結界は開放状態でした。
えっとね、ダンジョンの中のコアのある場所、ってのは、ダンジョンからもちょっと隔離された空間にある。なぜだかは知らないけど、僕が知ってる3つのコアは、全部そうなってるんだ。
で、その別場所であるコアの場所で、森の精霊様は、ずっと英気を養い中、らしいです。本人談ね。
『あの黒いのが、浸食してきて、いろいろ押さえていた。』のもあって、弱体化したらしいです。もともとは、実体化はしてなかったけど、森を愛する多くの存在、魔物とか、木々だね、そういうののおかげで精霊として漂っていたみたいなんだ。なんていうか、森の丸いキラキラたちのボス的な感じ?
それは人がいっぱい入ってくる前で、人が入って森を開拓し、それにともなって黒いのがたまぁにやってきたそうです。
自分のことを思ってくれる、森の精霊いわく『我が子ら』が消滅させられたりするのをなんとか押さえていて、力を消耗し、どんどん弱体化し、眠っている状態になってたところ、グレンの慟哭に引かれて目を覚ました、そうです。
みたいなことを、そのコアの場所の中のさらなる森の精霊の結界?異空間?に導かれながら、頭にインプットされたよ。
どうも、森の精霊は、直接データを頭に送ってくるみたいで、ちょっとワップワップなります。
意味分かんない?えっと、アップアップとウワァーーが一緒に来ておぼれる感じ?へへ、他に表現できないや。まぁ、ワップワップです。
そんな情報とともに、あの黒いのから森を守れるなら守って欲しい、みたいな感情とともに、送り出されます。
1歩踏み出せば、そこは・・・・
ハハ、お久しぶり、でもないな、花の精霊の異空間です。
相変わらず良い香りの風が優しく吹いてます。
僕のこの訪問は・・・
ハハハ・・・
相変わらず、みんな知っているようで・・・
エアと、どうやらさっき一緒だった3人組が先頭で迎えてくれました。
彼らにとっては距離なんて関係ないからとっくに戻ってたんだね。
華さんは、分かってますよ、っていう表情でニコニコ。
3人に、ゆらゆらの場所へ案内するよう指示したみたいで、僕、ではなく、その乗り物になっちゃってるグレンの鼻先でヒラヒラ舞って、おいで、って言ってるみたい。
グレンとは念話で話してるみたいで、僕にもその感情が伝わってきました。
華さんの異空間の入り口を隠す結界を抜け、グレンは花の妖精たちに導かれるまま、結構なスピードで走ります。またまた、潜水の魔法で結界張って、って、うーん、土の上で潜水の魔法ってヘンだよね。どうしよう。名前、変えるべき?
そんなしょうもないことを考えつつ、僕はどんどん運ばれます。
そして・・・
気がつくと、魔の森、樹海。
セス達の結界で囲われたその向こうに入ったとたん、濃密な魔素が空気に含まれるのが分かるよ。なんていうか、急に重力が増えた感じ?
『ダーよ。妖精達を中に入れてやれ。』
グレンが言った。
エアは勝手に入ってきてたけど、他の子達は上手く入れなかったみたい。
心なしか、身体が薄くなってるみたいで、うわってなったよ。
僕は、慌てて3人(?)も含むように結界を広げると、なんていうか、助かったぁって気配がした。ごめんね、気付かなくて。
結界越しでも、なんとなく重苦しいけど、外はどうやらもっとひどいみたいです。
グレンは、走るのをやめて、早歩きレベルで進んでいきます。
妖精達がその速度で限界っぽい。
聞いたら、僕らを案内するために姿を見せてこの次元にいるから大変なのであって、前回来た時は、別次元を通ってたようです。うん。エア達が普通にいるほとんど重なってる次元だね。
なんか申し訳ないけど、感謝、です。
『ここ~』
『ここだよ~』
『こっちこっちぃ』
確かにユラユラ、っていうか、南部のあの森で見たのと同じような揺らぎがある空間の前で3人は言ったよ。
そこそこ樹海の中に進んだんで、僕としても初体験。
樹海を留める結界の中には、セスでも普通は入らないからね。
表層に黒いのが出てきたときだけは、撃退するために入るようだけど。
それにしても・・・・
樹海の中なのに、その揺らぎからは、ちょっとだけ魔素の薄い風を感じたんだ。
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