第103話 宿へ戻って、出会ったのは・・・

 まさかのパクサ兄様がやってきてびっくりしちゃった、は、置いておいて、無事戻ってきた僕は、お宿のお部屋へ。

 なぜかミランダが僕の右手をひいてるんだけどね。

 と、ラッセイがひかれてるのと逆の左肩に軽く手を添えているし。


 連行?


 僕はチラチラと二人を見上げるけど、こっちを見てくれない。

 んー、怒ってる、って感じでもない、のかな?

 テレパシー使うのもなんかイヤだし、なんだかんだで、接触しても二人、ていうか、ほとんどの宵の明星のみんなは、ブロックできるんだよねぇ。触れちゃうと、否応なしに感情が流れて来ちゃう人がいるのとは逆で、僕としては楽、なんだけど・・・



 まぁ、勝手にリュック使って、いや、ポシェットだけどね、ワープして、ナスカッテ国へ行っちゃったから、みんな怒ってはいると思うんだ。

 でも、それが不可抗力で、精霊たちのいたずら?って分かってるから、そこまで僕が叱られることじゃないと思うけどね。

 あ、でも逐次あっちでの行動は報告されてバレてるから、勝手に無茶をやった、とかで叱られるのかもなぁ。


 そうだ、リュックって、みんなの分作って貰わなくちゃ。

 そういや宙さんのこと最初はリュックの妖精さん、なんて言ってたよなぁ。華さんとの出会いとかで妖精と精霊の差とか教わって、眷属いなくても宙さんは妖精じゃなくて精霊なんだ、って知って、そのうち、自分たちで呼び名を決めてたようで、僕がその名を使ったら、存在の固定化が進んだ、なんて、華さんも宙さんも喜んでたよなぁ。

 そんなつまんないことをツラツラと考えつつの連行です。だって、このドナドナ、なんとなく怖いじゃん。現実逃避、したくなっちゃうよ。



 なんて、現実逃避したところで、お宿の中。あっという間に泊まっている部屋へと到着です。


 カチャン。


 ラッセイがドアを開けて、・・・?

 なんか空気が・・・ヘン?


 「いいから入れ。」

 後ろからきてたゴーダンに背中をつつかれて、ちょっぴり転がるみたいに入ります。ミランダが、ちょっと持っていた手を引き上げ、ラッセイが肩を引っ張り、転けそうなのをフォローしてくれてるけど、かえっておっとっと、ってなっちゃったよ。


 そんな、ワタワタとして入った僕に、中にいた人の目がこちらに向いたんだ。


 ゴーダン、ミランダ、ラッセイ、ドク、それにモーリス先生まで、下で出迎えてくれたから、みんないた気になってたけどね、お部屋にいたのは、執事のバフマはもちろん、なぜかナハトにバンミ、そして・・・・知らない女の子?


 僕は、頭にハテナを浮かべつつ、促されるままに応接室というか会議室というか、まぁ、そんな形になっている、バンミたちがいる場所へと連れられて、いわれた場所に座ったよ。


 僕が座るとね、その斜め後ろに僕を挟むようにして、ミランダとラッセイが立ったんだ。うん、近衛騎士が控える、その立ち位置だ。

 ひょっとしてあの女の子に対して、僕は王子としていなきゃ、なの?

 でもそれにしては、ちょっとおかしい。

 だって、女の子は、泣いていたみたいに目が真っ赤で、よくよく見たら、バンミの上着の裾を、しっかりと掴んでいるんだ。

 王子、として会うなら、バンミは従者役。なのにその人の服を持ったまま、って、マナー的によくないと思うんだ。なのにマナーの鬼、的なナハトが困った顔はしてるけど、なんにも言わない。僕にも女の子にもね。


 それでも、その女の子、フラフラしながらバンミを支えに立ちあがって、僕にお辞儀をしようとしたみたい。よろけたから慌てて座ってもらったよ。



 ドクの号令で、なんとなくみんなが席について(ミランダたちも座って貰ったよ)、ちょこっとお話しを聞いたら、ああ、とちょっぴり納得です。


 えっとね、女の子はサリーさんって言うんだって。

 でね、お世話係にされていた女の子の双子のお姉さん、だそうです。うん、バンミのに噛みついた人。

 お世話係さんはリリーさんって言って、ファーラー男爵家の親戚筋だそう。

 えっとね、メイド長さん?、と言ってもメイドの数は少ないみたいだけど、その人からしたら従姉妹、なんだそう。で、メイド長さん、名前はシシリーっていうらしいけど、そのシシリーさんは男爵のお兄さんの娘、なんだって。


 ファーラー男爵は、もともとマッケンガー先生の腰巾着みたいな人だったんだって。素行は良くなくて、家族からもあんまり良く思われていなかったらしい。

 お兄さんは、普通に真面目な人で、辺境の無骨な男、って感じらしく、コツコツと開拓作業に従事する、この辺りでは一番多い種類の人、かな?

 フラフラ生活する男爵とはあんまり交流はなかったんだけど、その娘であるシシリーさんは、貴族と仲良くしているおじさんのことが好きだったらしい。どうも好きっていうより、貴族とのコネ、って考えてたみたいだけどね。

 夢は、貴族のお嫁さん。

 男爵になった時に、おじさんに頼みこんで、男爵家で雇って貰ったらしいんだ。

 ちなみにこのシシリーさんってのは、今、ラッセイに夢中です。

 王子の近衛騎士で男爵、しかもイケメン、シシリーさんからしたら逃したくない超優良物件、ってとこかな?まぁ、相手にも選ぶ権利はあるけどね。

 お察しの通り、僕が男爵家訪問時、ラッセイを連れてお庭へ行った、あのメイドさんでした。


 でね、男爵はもともと後ろ暗いことをするために男爵にしてもらったからね。その雇用人は、主人に絶対服従、お口が硬い、ってのは最低条件、だったようで・・・


 シシリーさんは、ここで雇われていることで、貴族と縁が結べるなら、もちろん否やはない、ってことで、ある意味信用されてるようです。

 で、他の人達も、マッケンガーというより、そのお兄さんレジーラム辺りから商会されたり、男爵の仲間(あまり質が良くない人達、だけどね)だったり、で構成されてるようで。


 そんな中、さらに自由に命令ができる人ってことで、リリー&サリーも連れてこられちゃったんだって。

 もともと、リリーさんはおつむに問題があったようです。

 そのせいで、家では鼻つまみ者。

 でも、サリーさんは一生懸命リリーさんを守ってたみたい。

 自分に懐いてくれるし、なんといっても瓜二つの妹が虐待されるのは、心に来るものがあったよう。

 そこにシシリーさんからのお誘いで、リリーさんでもちゃんと雇ってもらえる、ってメイドにしてもらったんだって。


 はじめはサリーさんと二人、普通にメイドしてたんだそう。

 だけど、あるとき、リリーさんに特別任務が与えられた。

 うん、あのお世話係だ。


 そんな感じで、お話しをたどたどしくしてくれたサリーさん。


 そして、さらにそのお話しは続いた。

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