第76話 報告会!

 お宿に帰ると、ゲンヘで遊んでる?モーリス先生とドク。

 どうやら、モーリス先生の満足いく結果になりそうなんだって。

 化けたあとのゲンヘの死骸はほぼほぼゴムで、僕はタイヤチューブを考えてたんだけどね、モーリス先生は点滴を作るみたいです。えっとね、点滴用の長いチューブを探してたみたい。

 針はスーパー鍛冶師がいるし、しかも点滴の針がどういうものかって分かってるからね、カイザーが金属系の医療道具って、かなり作ってくれてたみたいなんだ。けどね、点滴用のチューブがお眼鏡叶うものができなかったんだそうです。不純物が混ざらないように薬剤を長時間かけてポタポタ、ていうのは、なかなかに高難度の注文だったそう。

 それが良い素材が見つかったって、大喜びです。なんかね、ドクだと上手に魔法が使えるからね、僕なんかと違って魔力コントロールもお上手です。僕が手伝って出来なかった絶妙なサイズのチューブを作るって補助をドクが・・・

 別に、僕じゃ出来なかったって、悔しくなんて、思ってないです、クスン。



 それとは別に怖い顔をして話しているのが、偵察チームのゴーダン達です。

 いやはや、黒い空気が・・・・

 僕らが帰ってきたときには、当然先に帰ってきてた3人。

 そこにさっさと加わった僕と一緒だった二人。

 話、聞きたいような聞きたくないような・・・


 僕がちょっぴり逃避しつつ、モーリス先生たちとチューブの話をして、勝手に僕が凹んでいる間、3人に2人が加わって、なにやらお話し中。

 僕は、いかなくていいよねぇ、あんまり加わりたくない気配をさらに増幅中の集団を目にしないようにしつつ、夢中でチューブに感心のふり・・・

 は、そうそう続かないですよねぇ、はぁ。

 そもそもの話、ドクも先生も話し合いに参加予定でした・・・・・


 お茶を入れたっていうバフマに促され、全員参加でお話しです。



 ラッセイが聞き込んだ塀や建物の構造と男爵家の人の配置等をこちらの組はご報告。って、ラッセイもミランダもいつの間に建物や人の配置をチェックしたのさ!いや、メイドさんとお話ししてたしさ、従者さんへと二人ともコソコソってしてたしさ、そういうのは見てたけど、さぁ。なんか僕って役立たず感がすごくないですか?


 なんか帰ってから凹むことばっかりだなぁ、と思いつつ、さらなる報告を聞きます。


 ゴーダン達は屋敷の外をチェックしたり、ゲンヘを入れてる倉庫を見たりもしてたみたいです。

 倉庫は複数あって、見つけてたゲンヘの倉庫以外にも複数あるけど、どれも窓は屋根付近に空気穴程度であるだけみたい。1階が窓のないのは当然として、倉庫はさらに頑丈にするため窓がないんだろうね。

 見張り用の窓は、お屋敷の2階以上でOKなんだろう、って言ってます。


 でね、エアの活躍もあって、お屋敷に結界の魔法陣があるって分かったけど、どうやらドクが聞いたことがあるようです。北の大陸で似たようなのがあるんだって。


 なんかね、お屋敷の基礎の段階で、石やら鉱石を使って地中に魔法陣を描くんだって。

 これは、魔導師対策の建物、たとえば、魔導師用の牢屋だったり、訓練施設に

使う場合が多いらしい。魔法が中に入ったり外に出たりしないようにするもので、物理的な障害は行えないんだけど、対魔道具や対魔導師には有効だそうです。

 魔法を撃っても外に出ないなら、確かに訓練には良さそうだね。


 でも、普通の物理攻撃に対して有効じゃないなら、あ、そっか、それで物理攻撃用には分厚い壁、なのか・・・そんな風に考えていたら、ドクが

 「基本は魔導具対策じゃろうな。」

だって。


 この世界、魔道具っていうのは幅が広い。

 その中でも契約書なんかを魔道具化したものは、証拠能力が高いものとして扱われてるんだ。

 これには、ロックというか前世でいうところの電子証明みたいな感じで、魔力が使われる。本人確認、だね。

 契約書ってそのものが魔道具でもある。

 たとえば、口止めをしていて、それを破ったらこんな罰を与えます、なんていう契約書を作ると、破ったら勝手に魔法が起動して、罰が現実化しちゃう、なんてのもあるんだ。

 でね、この契約書から魔法を破壊する。

 すると、これはただの紙ペラ、魔法が起動することはなくなっちゃって、結果契約もないと同じ、ってなるんだ。


 ドク曰く、この結界を通ると魔法が消滅する。

 魔力を使って書いた契約書なら、文字そのものが消えちゃう、だそうです。

 北の大陸では、こういう正式文書っていうのをつくって保管するお役所みたいなのがあるんだって。契約書だけじゃなくて、正式な報告書とかもマル秘文書はこんな形で置いておくんだ。

 そのための建物はこのような術式を、建物を造るときに埋め込んでいる、だそうです。


 同じ使い方のためか、他のためかはわかんないけど、とにかく現状として、中の様子を魔法で探ることは出来ないし、念話も通じることはできない、ってことがわかりました。

 で、裏口でも開いていればその機能がなくなるか低下するってことも、外と念話が通じたことから確実、だね。

 正規の出入りで魔法がきえちゃ色々困っちゃうから、当然魔法を通過させる方法も用意しているそうで、それが建物の扉ってのは定番だそうです。建物ごと魔道具扱い、なんだそう。



 まぁ、何が目的でこんな大がかりな魔法陣付の建物を造ったのか、内緒話に適したように、だろう、なんてうっすら予測で、そこは良いとして、一番問題なのは、地下牢のことだろうね。

 でもみんな、その話しになると口が重くなる。

 一体何があるんだろう。


 「ちっとばかり、いや、相当胸くそ悪い光景だった。少なくともダー、お前は地下へ行くことを禁ずる。」

 ゴーダンってば、僕を睨むけど、一体何を見たんだろう?


 「結論から言えば、養成所の行方不明者、と思われる者が3人。いずれも男だ。怪しいがおそらく生きてはいる、今のところな。そして、その世話役をさせられていると思われる女が一人。こいつは、まぁ、なんだ、・・・正気を失っている。4人は・・・全員全裸で、骨と皮の状態、というやつだ。全裸だったから、なんとか性別が分かった、そう思ってくれ。」

 「その・・・救出をしなかったのですか?」

 ミランダが聞く。

 「体勢を整えてからにする。はぁ。その、なんだな。女にバンミが喰われかけた。」

 チラッとバンミを見る。

 大丈夫って言う風に苦笑いするけど、確かに怪我はなさそうだ。っていうか、先生に治して貰ったのかな?

 「ダー、あとで治療してやってくれ。」

 「大丈夫だよ、モーリス先生に消毒してもらったし・・・」

 「いいから大事をとっとけ。」

 なんか、バンミがゴーダンと押し問答してるけど・・・・


 バサッ


 イライラしていたアーチャが、バンミのズボンを下着ごと引き落としたよ。


 あらら・・・


 バンミの大事な男の子の部分に包帯が巻かれていました。

 喰われかけた、って・・・そこ?


 

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