第66話 合流と離脱と
司令官さんたちとのご挨拶のあと、早々に後方、冒険者たちが集まっている辺りに戻った僕たち。
突貫の遊戯や養成所から来た面々と話していたのは、まさかの領都にいるはずのディルさんにリークさん、そして騎士の集団と共にいたはずのクレイさんとその従者の人達だったよ。
聞くとね、クレイさんは伝言ゲームで赤いランセルに乗った小さい子(!。失礼な・・)が冒険者たちとワイワイやってるって聞いて、すぐに僕だと思ったから、こっちに走ったんだそうです。赤いランセルだから僕だと思ったんだよね?小さい子とかじゃないよね?
どうやらクレイさんとライライさんといった治世者養成校の2人(とその従者)は、騎士さんと同行って司令官サイドに言われたんだって。で、クレイさんは主に男性騎士の中へ、ライライさんは女性騎士の中へって感じで分かれて行軍してたようです。
一方、ディルさん達。
ディルさん達には社交で随分お世話になったんだけどね。おかげで勢力図的なものはうっすらと分かったし・・・
えっとね、僕らが社交してたような人達は、領主の孫世代って感じなんだけどね、どうも領主世代はそれなりに仲良しさんみたいです。身内で争ってやっていけるほど緩くない、なんてことを、そういや以前ディルさんも言ってたしね。
ただね、その子供世代=ディルさんたちからしたら親世代がちょっとばかり面倒みたいだね。
領主派vs大臣派なんて、そういや聞いたっけ?
領主様も兄弟はたくさんいるし、その下の世代も、割と子供は多いようで、そのそれぞれに思惑があるようです。
それがさらにその下の世代にダイレクトに受け継がれ、社交にもかかわらず、主張しちゃってるっていうのが、なんだかねぇ。いろんな意味でバレバレです。
セリオたちが僕に子供の社交を勧めてたけど、こういうことだったんだなぁ、って思うと同時に、この領地大丈夫かな?って心配になっちゃったよ。
だってね、どこへ行っても僕は大体最年少だったんだよ?てことは、平民だったら普通に暮らしの戦力まっただ中、見習いとして働くような年齢だ。それは貴族にしても同じで、社交なんてのもそのお仕事の1つ、なんて常識だと思ってたんだけどね。
社交なんてさ、情報収集はするけど、されないように上手く会話をするのがたいへん、じゃなかったっけ?なのに情報渡し放題知り放題って、なんだかねぇ。
これはこの領の気質なのかなんなのか、さすがに大人の社交ではこんなことはないと思うけど・・・
人ごとながら、ちょっと不安だなぁ、なんて思う今日この頃。
まぁ、分かった事って言えば、何人かいる領主の兄弟のうち、この領に残っているのは領主のガリザムに弟のライザム、ジラドム、妹のパティーヌの4人。一応ガリザムが長男、ライザムが次男、ジラドム三男で、パティーヌは次女ってことらしいです。
ライザムさんとジラドムさんの間にいる長女さんは、王族に繋がる人(僕は知らない人みたいだけどね)と結婚したし、ジラドムさんとパティーヌさんの間の四男さん、そしてパティーヌさんの下の三女さんは、貴族籍を離れた、そうです。
子供たちではそこまでで情報が限界、かな?
ちなみにライザムさんは未婚でずっと領主の右腕として開拓の先陣を切ってるそうで、ジラドムさんはいとこでもあるレーミヤさんと結婚してテッセン家に移ったんだって。ちなみにその三男がマッケンガー先生らしいです。
えっとね、ジラドムさんは戦いとかがあまり好きじゃないらしいんだ。で、もともと裏方っていうか、文官をとりまとめていたテッセン家に入ったんだって。そっちの才能は豊かで、ジラドムさんのおかげで、この領は成り立っているんだ、なんて、ご領主自身が言ってたよ。ほら、着いた翌日のお食事会の時に聞いたんだ。
あの席でそういやご領主の3人の弟妹ともご挨拶はしたんだけどね、みんな仲良しって感じで、ジラドムさんのことも褒めてたんだよ。
そのあと子供たちの社交で知ったんだけど、ジラドムさんの子供たちは、あまり文官ってことが気に入らないようで、その子供たちも・・・て感じだった。なんか本当だったら戦ってもっと尊敬を集めてるはずだ、って思っているようで・・・
まぁ、この辺境の地ではトップの家系。プライドはすごく高いようでした。ほら、ナルミヤ君、とかね。あの人はジラドムさんの長男レージラムさんの三男だって。
うん貴族の家系とかややこしいよね。
テッセン家って、でもすごいんだよ。
ずっと文官のトップで領主家とも縁戚だし、王家とも血縁関係があるようです。
財務とかは、ほぼほぼこの家が携わってるからね、商人たちが詣でるのはほとんどテッセン家みたい。領主様ってば、弟を信頼してるから、すべて善きに計らえって感じで、開拓という名の狩りばかりに力を入れてるようです。ハハハ。
てな感じの情報は、ディルさん達のお陰で仕入れられたんだけどさ、この人達の情報収集能力はすごい、ようです。
ちなみにディルさんのおうちのフィノーラ家。領主の妹が嫁ぐだけの家系であって、参謀的なことが得意なおうち。
行け行けドンドン、な感じのご領主様の手綱をしっかり引く、まぁそんな役割を負ってきたようで、財務のテッセン政務のフィノーラというのが領主フォノペートを支える両腕、てことのようです。
ディルさん達、そのすごい情報収集能力で、領主の元を訪れたドクの、僕らが討伐隊と合流しに出かけちゃった、って報告を、ほぼリアルタイムでキャッチしたみたい。で、その足で追いかけてきたって言うんだから、行動力にもビックリだね。
僕らは、グレンがゲンヘ部隊を屠ったって場所に足を伸ばしていたりしたから、こうやって追いつけたようです。
なんかね、荷物もほぼ持たずに、シューバを走らせて追いついたって言ってた。合流すれば食事等も大丈夫だろうって、ほんとうにわずかな乾物だけで追いかけてきたみたいで、驚いちゃったよ。
そんな話をしつつ行軍、そしてすぐに野営になったんだけどね。
うん。僕らは遊撃部隊という名で、明日の朝からちょっとみんなと分かれて、森へ入ることになっている。
アーチャが気になる場所があって、そこに僕を連れて行くっていうからね。
ていうか、本当はこんな合流せず、そちらに行こうって思ってたみたいなんだけど、グレンのお披露目をしておきたい、ってゴーダンが言うからさ。
一応、領都にはドクも報告に行ってくれてるし、隣町では堂々と僕が騎乗してお披露目してきた。
で、この領での一番の戦力とも言える討伐隊の人に認知させたら、まずこの領で問題が起きる心配はないだろう、ってのが、ゴーダンの考えだったんだ。
森に入ってるときに、討伐隊の人に攻撃されたら目も当てられない、ってことのようです。
てことで、合流からの離脱、は速やかに、なんだけどね。
そもそもさ、いろいろ秘密もあったりするし僕ら宵の明星だけで離脱、の予定だったんだ、よね。
けど、こうまでして着いてきてくれたディルさんリークさんが、どうしても僕らと行くってきかない。クレイさんもここで離れたらシルバーフォックスに殺される、なんて言って従者たちも激しく同意してるんだもん。
他にも何人かついてきたいって感じだったんだけどさ、ゴーダンの「足手まといならグレンのエサにする。」発言と、それに便乗したグレンの頭からの甘噛み(?)攻撃で、遠慮してくれました。
グレンに噛みつかれても、ビクともしなかったディルさんリークさんクレイさん。逆に驚くよね?
まぁそんな感じで、僕らに同行することになったのはこの3人。クレイさんの従者は居残りです。どうやら、ライライさんの牽制にまわってくれるみたい。
あのね、ライライさんは女性騎士の人達と一緒。てことで、女性の集団の中から抜け出せないでいるんだ。ほら、やっぱり女の人って、いろいろ大変みたいだから集まって身を守るのがこの辺境でも行われているみたいでさ。
ただ、ライライさんはなんとか僕と合流しようと頑張ってるみたいです。
そんな中、クレイさん達がいなかったら、おや?ってなるよね。クレイさんの従者すらも見えなかったら、あれ?って思っちゃうでしょ?
てことで、ライライさんの目にチラチラ触れるように、従者さん達が行動してくれるようです。クレイさんを放っておいていいのかなぁ?そこまで僕らは責任もてないよ?
「外国にダー様を横取りさせたりしませんよ。」
なんて、白い歯をキラリってさせていた従者さん達。
横取りとかそこまで考えてないとは思うけど、ちょっぴり面倒なんで、お願いしますね。
こんな感じで、翌朝早く、討伐陣が未だ出発しない中、僕たちは森の中へと、そうっと繰り出したんだ。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます