第51話 遠征訓練(9)

 「チャウ、セッチ、ランザ、レージン、トーアン、タメル、ルックラ、パーチム、ガイガム、ディル、リーク以上11名。剣使養成校所属!」

 「ライナ、チック、リーリン、ターセラ、リンメ、パジー、セッタ、ランザ以上8名。魔導師養成校所属!」


 僕の両隣には、クレイとライライが位置取って、相対するように並ぶ、討伐隊参加者たち。

 僕たちの後ろには、ラッセルとドク、そしてクジとナザ。

 さらにその後ろにバンミたち従者組がワラワラと、うちの3人を含めて10名だ。


 これがランセルっていう、まぁ、グレイっていうかシルバーの毛を持つウルフたちの討伐隊。

 これに参加して、認められた者達だけがこの先を進んで良いって事になっている。


 ちなみに医療者養成校の所属の人は、討伐隊に参加しなくても、自薦プラスモーリス先生のOKで参加出来るって事になってるんだ。戦いに向く職業じゃないし、回復役として戦いの場にいけそうな人がいないっていうのも理由。足手まといがいると、ただでさえ特殊個体がいたら危険だからね。僕だって一応は治癒魔法使えるし、お薬も余分に用意してるし。



 魔導師さんは、なんか、僕の魔法を見て、士気が上がったらしく、参加したがった人がたくさんいたみたい。でもゾロゾロいっても、所詮は実戦慣れしていない人だし僕らがお守りすることになるだろうって事で、ドクが試験をして絞り込んだみたいです。

 その試験でも、南部の人ってやっぱり優秀で、目をつけた人はちゃんと入ってるようだね。


 えっとね、南部の人で参加してるのは、ディルさんリークさんを除いて5人かな?剣使のリージン、タメル、バーチムと魔導師のセッタ、リーリンって人。

 ちなみにバンミにちょっかいをかけていた子は、そもそもこの遠征に参加してません。ていうか、いつの間にか卒業していたらしく、もう学校に来てないみたいだね。


 剣使の方は、どうやらほぼほぼ騎士じゃなくて、冒険者志望の人たちみたい。ていうかすでに冒険者で、高みを目指して、学校にパーティで来たっていう強者たちが・・・

 えっとね、剣使のチャウと魔導師のチック、ターセラって人達は、7名組のパーティ【突貫の友誼】の仲間、らしい。7人で受けたけど、チックさん以外の剣使希望者は、合格しなかったんだそうです。3人とも2年半ほど生徒やっていて、半分は学校半分はパーティで活動してる、らしい。ちなみにチックさんとチャウさんは双子の兄弟でチックさんがパーティリーダーなんだそうです。


 そんなような説明を聞き、一応僕がこの隊のリーダーとして、さて、出発!



 なんだけどね。


 正確に相手の場所が分かってるわけじゃないからね。

 それに相手のことも・・・


 予測としては、ダンジョンかそれに近いものがあるかもって話していました。

 えっとね、特殊個体が現れる時って、周りの魔素が異様に増加したり、とある種族が異様に増殖または減少したときに起こるんじゃないか、って言われてるんだって。まだ絶対そうだっていうわけじゃなくて、学者さんがそんなことを言ってるって感じだけどね。

 ただ、経験則としてそれが正しそうっていうのは、冒険者、特に危ないところによく行く高ランク冒険者にとっては、常識っぽい感じなんだよね。

 実際、僕らもそういう経験はそれなりにしたし、ね。


 今回の場合も、なんていうか、群れるにせよ多すぎない?って言ってるんだ。だからこその討伐隊でもあるんだけどね。


 普通はね、魔物が増えたんじゃないかな?っていうのは、そこに住んでたり、通行する人が感じて、調査されるんだ。増えすぎてる、とかなると、冒険者に討伐の依頼が出たり、それでも間に合わなきゃ領や国に訴える。

 だけど、ここまで行軍してきた中で、ランセルが増えてて襲われる数が増えてる、なんて話、全然聞かなかった。だからこそ、斥候部隊も慌てたし、騎士団や先生であるラッセイ、それに僕なんかも出動したんだけどね。

 ただ、急すぎる、っていう違和感はぬぐえない。


 まぁ、そんな不安も討伐隊で解消しよう!ってな感じで、意気揚々と出発です。

 退屈な馬車の旅でなまった身体をほぐしたい、なんて、・・・・ちょっとしか思ってないです、はい。



 索敵を広げると、小さな集団がチラホラ。

 どうやらあちらの斥候隊、かな?

 僕は、本当のリーダーであるドクやラッセイに報告したよ。

 二人の判断は、相手はばらけてるし、養成校の人達で対応させる、でした。

 僕も養成校の生徒だし、出ても・・・はぁ、ダメなようです。

 とりあえず、みんなの実力を把握して、戦力として当てにするにしろ、守るにしろ、判断材料が欲しい、とのこと、なんだよね。


 そんなわけで、とあるランセルの集団に遭遇するよう行軍し、養成校の人達に討伐して貰うことにしよう。

 どうやら僕以外は今までに一緒に戦ったことがあるみたいで、それなりに上位者としてお互いの戦法を知ってるみたい。パパパって3組に分かれたよ。

 1組は、ハハハ、ガイガムと愉快な仲間って言ったら二人に怒られるかな。うん、ディルとリーク。3人は新人であまり共闘の機会がなく、自分たちだけで組んじゃった。てか、取り残されただけ、ともいう。けど、まぁ。ディルとリークでなんとでもなるよね、通常種のランセルなら。


 1組は突貫の友誼3名にセッチ、ルッコラ、レージン、リーリン。

 そして残りの人達で1組、かな?


 まず、出てきたのは5頭のランセルだ。

 各組、1匹ずつお願いして、僕とラッセイで1匹ずつ仕留めました。フフフ、なんとか出陣の許可をむしり取ったよ。


 このメンツで・・・うん、余裕、かな?

 ガイガムが手出しできずにいて、僕を睨んできた以外は、全然問題なし。


 てな感じで、奥へ奥へ。

 見た感じ、やっぱりディルさんとリークさんはなかなかの強者です。

 多分クジやナザと張るか、ちょっと上かもね。

 あと、突貫の友誼組は、上手だな、って思ったよ。

 すっごく強いわけじゃないけど、協力して確実に削ってる。

 それに対して、もう1組は、1匹でギリギリ、かな?


 ラッセイとそんな話をして、途中から彼らだけに任せたら、前2チームは複数相手でも大丈夫だなって分かりました。



 僕らは、森の奥、ランセルの集団が多くなっている方へと、ちょっとずつ進みます。

 ちゃんと、戦闘1回終われば休憩、ってやってるよ。

 どのくらいの長丁場になるかわかんないし、どんどん増えそうだし、ね。


 で、いつもより多めに休憩、早めに野営準備。

 こんなにゆっくりで本当に間に合うのかなぁ、っていう僕の愚痴にドクは笑っているけれど・・・


 なんかね。

 面倒そうなライライさんについては、上手くコントロールしてくれてるのか、ほぼほぼ側でみなかったよ。

 聞くと、行軍中は魔導師の指揮に当たってるんだって。

 ついでに、剣使たちの指揮はクレイさんだそう。

 戦うときにチーム分けも二人でやってるみたい。

 二人は今までの授業でここに集まっている人と一緒に勉強したこともあるらしくて、能力を把握しているはずだから、パーティを適宜組ませてる、ってことみたいです。


 あのね、僕、気付かなかったけど、固まったチーム以外はいろいろとメンバーチェンジしてるみたい。

 各班のリーダーとしてディル、チャウ、セッタがいて、そこに配置してたんだって。全部同じかと思ってたよ。


 そんなわけで彼らは忙しくて、僕の側には来てないです。


 クジとナザは、弱いところに助っ人な感じで行く予定なんだ。

 もし戦えなくなりそうな強敵が現れたときは、生徒たちの守護を二人と、それにナハトが担うことになってる。そっちのリーダーはナハトに決めてんだ。ナハトは、多分、今いるメンバーでは一番指揮が上手いから、本当は全体の指揮を取って欲しい、そう言ったら、無茶苦茶怒られたよ。

 ナハトはあくまで僕の部下、なんだそうです。って部下なのに上司に一番当たりがキツいのはどうか、と思うけどね、ハハ。


 そんな感じで、戦力分析をしつつの1日目。

 ゆっくりと、終わろうとしています。

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