第44話 遠征訓練(2)
1人減り、2人減り、ってのは、ちょっぴり嘘。
大体数名単位で減っていきます。
やっぱり一番多いのは徒歩の剣使養成校の人達かな。
一応、村って感じの集落とか、町があるから、そこを通る度に、ちょっとずつリタイアしていきます。さすがに森の中では帰れないからね。
雨の日は、それなりの集団で消えちゃったから、朝出発した宿場町にでもみんなで到着してるはず。
一応、街道沿いに行軍してるってこともあって、途中途中の村にも行商人だったり、冒険者だったり、たまには見回りの騎士とか、その他もろもろ用事で移動してる集団が通るんだ。それ以外にも、定期的に集落をつなぐ乗合馬車なんかもある。
とりあえずは、どこかの集落にいれば帰る手段は見つかるからね、リタイア組が僕らの行軍から離れても、問題はないんだけどね。
ただ、安全面では絶対は保証できない。
それはまぁ、どんな集団でも乗合馬車だって、魔物や盗賊の襲撃の可能性があるからね。行軍に参加時点では、覚悟しているはずだから、運悪くそういうのに遭遇しても自己責任、なんだ。
そろそろ1旬。約10日かな。
歩くこと自体には随分慣れたみたい。
僕たち治世者養成校の人間は、基本は馬車の中。運動不足で辛いよね。
てことで、休憩時間には、一応視察名目で、あちこち飛び回ったり、たまに現れる魔物の襲撃時には、指揮の訓練として、シューバに乗って走り回ったりさせてもらってはいるんだ。
けど、やっぱり・・・・たいくつだぁ!!!!
なんて、身内だけの気軽さから、じたばたしちゃったのが、悪かったんだろうか。
前方からの号令で、行軍は急停止しました。
魔物?
なんだか、前方の剣使養成校の子や魔導師養成校の子が浮き足立ってるのに気付いたよ。ううん。言い方がぬるいかな。
前方の守備をしてたはずの子たちがパニックで騒いでる。
「無理だー!」
「引けーーーーー!!!」
「きゃぁ!!!」
「わー!!」
いやいや、だめでしょ。なんでパニクってんのかな。
飛び出そうとした僕を引き留めて、バンミが馬車から飛び出した。
前方にもともといたかはわかんないけど、ラッセイのみんなを鎮めようとする怒声が聞こえる。
僕は、ナハトに言われて、一応馬車で対応待ち。
なんだけど・・・
前のパニックに煽られる感じで後ろの方もザワザワしだすし、これ、戦うよりもこっちの収拾の方が難しいよ?
そんな風にどうしようって思ってたら、プジョー兄様の声がして、僕らは一度馬車から出ることになったんだ。
「従者諸君で、自分の主は守れるか?」
ぞろぞろと出てきた治世者養成校の面々。
さすがに肝が据わってるのか、緊張はしているけど、パニクってる人はいなかった。
従者としてついている人は、ほとんどがそれなりの護衛経験者ってこともあって、それぞれ主にぴたりと寄り添ってる。うちのバンミはいないけどね。
「状況確認次第だが、見ての通り、生徒たちの混乱が激しい。各自、彼らをまとめて、戦闘できる者と無理な者を選別、指揮して欲しい。クレイ、ソーヤ、ボナジ。各々、前、中央、後ろの戦闘可能な者を選別し、指揮。ボナジをチヌオイが補佐。ポリア、ライライ、タッター、君たちも同様に前、中央、後ろの戦闘不可能な者をまとめて保護。ホンレムはタッターの補助。」
そして、と、僕の方を見るプジョー兄様。
そこに、偵察に行っていたバンミがちょうど帰ってきたよ。
「すみません、お言葉遮ります。前方ランセルの群れ。騎士団2名およびラッセイ教官を中心に迎撃中。アレク王子、そっちに私と参加せよと教官の指示です。あとはプジョー殿下にお任せせよ、とのこと。ナハト、後方ワージッポ博士に状況報告!」
兄様の言葉を遮ったことを謝るバンミ。
けどランセルだって?
えっとね、僕の認識ではシルバーウルフだ。こっちの言葉でランセルって言うんだけどね。
街道ではそれなりに良く出る魔物。オオカミのでっかいやつ。
一匹一匹も強いけど、何よりやっかいなのは群れで行動すること。希にでっかいボスが率いてて、そいつはかなり手強い。
小さい頃はじめて焦った魔物だ。
トレネーからミモザの街道に巣くって、多くの被害を出したこともあったっけ。
確かにシルバーウルフだったら、この集団を襲ってもおかしくないだろう。
明らかに、ヨタヨタと歩いている生徒たちの群れ。
簡単に捕食できる大量のご飯、って見てるんだろう。
そういや、昨日、ご飯の時に、ラッセイが森が静かすぎて、嫌な予感がするって言ってたけど、原因はランセルの群れだったんだろう。
昨日か、下手したらもっと前から、この集団を遠目に観察していて、敏感な魔物たちはこの辺りから姿を消したんだと思う。
それにしても・・・
僕は、バンミにさらに報告を受けながら、前方へと走り、周りに目を走らせた。
右往左往する者たち。
それらを怒鳴りつけるのは、冷静さを残している生徒たちか。
中には、まともなグループもあって、外へ向かって牽制している人達もいるけど・・・
「前方でリネイとトッチィが弾幕張りつつ、ラッセイが前に出てる。ただ、やつら、この集団全体を囲ってるみたいで、ワージッポ博士が後方で結界を張ってるみたいだ。」
ドクの結界は僕も感じていた。
戦闘が始まるか始まらないかの時に、ドクの魔力を感じたから、ゆっくりしてたってのもあるしね。冒険者としてじゃなく、できるだけ王子=生徒として戦闘も対応するようにって言われてたから、飛び出すのも我慢できたんだ。ドクの魔力がなかったら、きっとナハトの制止も無視してたかもって思うよ。
「ドクのところにはクジたちがいるから後ろは大丈夫だな。ナハトも向かったんなら、とりあえずはどうとでもなる。」
僕は、走りながら、そう言った。
「ああ。一番攻撃が厚いのが前方だ。おそらくボス種がいるだろうって。さすがに素人じゃ無理だし手が足りない。ダーを使うってさ。」
「了解。」
ちょうどその頃前方に飛び出した僕ら。
前方の後方?てのも変か。
生徒たちを集めた、そのちょっと前に、トッチィが立っていて、得意の弓で、まとめて2匹、頭を貫いたところに到着したんだ。
「やっときたか。ラッセイが深く一人で入りすぎてる。前方中央だ。」
「リネイは、って右か。じゃあバンミは・・・」
「俺は左へ。」
右手にリネイの魔法攻撃を確認しつつ、バンミを見ると、バンミはあっという間に飛び出していったよ。
じゃあ、僕はラッセイに加勢かな?
トッチィが次の矢を放ったタイミングで、矢について行くように、僕は走り出したんだ。
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