第42話 遠征訓練参加者が多くなりました
南部の調査、もともとは学校からを偽装しつつ、うちの関係者だけで行う予定だったんですよ。
でもね、王家の横入れ、って言ったら叱られちゃうかな?正規の訓練?ちゃんとした授業の一環?まぁ、そんな感じで、養成校のイベントに僕らが乗っかって調査する感じになっちゃいました。
でね、まさかまさかで、治世者養成校の生徒全員参加希望出しちゃうし。
南部の人に関しては、剣使養成校や魔導師養成校から数名っていうか、お金が出るって言ったら、2桁の参加者。うち、ディルとリークまで来ちゃうっていうんだ。
情報貰ったし、むしろ王都でいてくれた方が、いざ何かあったときに無関係って言えるから安心だったんだけどね。
ただ、彼らの表向きの任務がガイガムの護衛。そのガイガムが、行くって言い出したみたい。
なんかね、僕の参加を聞いたらね、行くって・・・
それに、野営とか魔物との本物の戦闘とか、自分なら上手くできるはずだ、って言ってるんだって。ハハハ。なんというか、彼、どっちも未経験らしいです。根拠のない自信持ってる人、いるんだよね。
ちなみに小さい頃の僕のお仕事、冒険者ギルドから指命依頼で一番多かったのが、自信だけの新人さんをこてんぱんにやっつけて、って奴でした。あ、もちろんギルドの訓練所で、ね。未だにこの依頼はトレネーではテッパン、かな?
本当の新人さん、まぁ、僕と同期ってことだね、それで行くのは、僕以外でガイガム、そして複数の南部出身者だけでした。
だけどね、それでも、いつの間にか大所帯。
まずは引率っていうのかな、剣使養成校引率がラッセイで、治世者養成校がプジョー兄様、そして魔導師養成校から校長であるワージッポ博士、って、僕の仲間のドク、だね。
あとは、一応協力ってことで、リアルの近衛騎士でもある魔導師のリネイ、そして弓使いの騎士トッチィ。
この二人も、実はひいじいさんの教え子っていう、まぁ、ほぼ身内の人。で、この二人が率いる騎士隊計5名。
治世者養成校の面々は最低2名の従者でしょ?
プジョー兄様も2名連れてるし・・・
僕はバンミ、バフマだけじゃなくてナハトも当然、って感じ。
あとは単純に遠征参加したい各養成校の生徒たち。
結局・・・・ゾロゾロと、100名超の遠征隊が出来ちゃったよ。
あ、そうそう。
この遠征隊、医療者養成校からも人がついてきてた。従軍の医療チームって、一応騎士団付で花形。経験者なら就職も有利、らしい。
でもって、引率ってわけじゃなくて、王室の依頼って形でうちのお医者様もその指導に入ってました。
モーリス先生っていう、異世界=地球の転生者。前世ではイギリス人。アメリカで脳外科として活躍した人、らしいです。
これはね、モーリス先生のたってのお願いだったんだ。
先生が気になったのは、魔物のニョンチョ。
麻酔に役立たないかな?ってことで研究したいからついてきたい、って言ってたの。それをプジョー兄様に言ったら、王家が依頼して、従軍医療チームの指導に呼んでくれたってわけ。
そもそも医療者養成校の先生たちは、外での行動が嫌いだったり、騎士団所属だったりで、人が不足してたから良かった、って兄様は言ってくれたけど、お言葉に甘えたって感じかな?
てことで、まさかの人数です。
しかも皇太子の子供、僕を入れたら4人中3人が参加。
フフフ。もう一人の子供であるパクサ兄様も来たがったんだけどね、さすがに危険かも知れない場所へ跡継ぎ候補全員が行くことは出来ないってことで、プジョー兄様とどっちが残るかって、ちょっぴりもめたんだ。
でもね、口はプジョー兄様が、ずっとお上手だからね。
そもそも事件そのものは王都で発生しているし、怪しい人は王都にいる。だったら、調査の責任者であるパクサ兄様が王都に残らなきゃならないだろうって。
第一、依頼を受けてる宵の明星が調査で遠征するのに、依頼元で調査の要であるパクサ兄様がついていってどうする、てな形。
苦いお顔をしてたけど、最後には渋々と頷いてたよ。
お土産いっぱい買ってくるから、がまんしてね?
宵の明星の正規メンバーでいうと、ゴーダンとミランダは先行して南部へ向かってる。
ママとヨシュアはトレネーへ。
商会の仕事もあるし、情報の収集を継続するってことで、トレネーで腰を据えることになってます。
アーチャは王都に来てたけど、ナハトが来た後、入れ替わりにミモザっていう僕が代官を務めている(と書類上はなってる)町へ。
彼が、ミモザ近くのエッセル島ってところにいる、モーリス先生と、うちの鍛冶師であってドワーフ族、しかも前世地球人の元ドイツ人技師カイザーの二人と合流して、南部へ向かう予定なんだ。
ミモザっていうのは北にある、まぁ、我が国最北端の町でもあるんだ。
しかも、そのミモザ、途中でトレネー領の領都トレネーを通って山越えしなきゃ今のところ南部には行けない。一応山越えルートがあるらしいけど、危険度とか考えて、普通は通らないらしい。
大きな街道でいえば、トレネーから東へ進み、南下すると王都タクテリアーナ。
で、トレネーとタクテリアーナへ行く東西に延びる街道の間には数本南下する道があって、それは大森林を抜ける形になる。
大森林を分断する形で、いくつかの小さな領があって、それこそ、ダンシュタ程度の小さな町が領都だったりする。で、ナッタジ村程度の小さい村を数個衛星都市(規模は村だけど)として管理しているんだ。まぁ、僕は聞いただけで、行ったことはないけどね。
そういう小さな領地の集まりを抜けるルートを通るとバルボイ領領都ガッザーナへの近道になるんだって。
どうやらゴーダンとミランダがこの小さな街道を使って南下しつつ、バルボイ領へと向かってるみたい。
で、アーチャとカイザーはこれを追う形。
ちなみにアーチャには見習いのナザが同行するって言ってた。
でミモザとトレネーでそれぞれニーとクジっていう仲間が参加。
えっとね、ニーは奴隷時代の同じ境遇の女の子。今では、モーリス先生の一番弟子。
クジは、僕ら奴隷だった子供たちにとって兄貴的な存在の一人。
ゴーダンに憧れて冒険者見習いから、一応最近成人して冒険者になったけどね、どっちかっていうと計算とか人との交渉が得意で、今は主にトレネーで商人としても勉強中。
ナザ・クジ・ニーの三人は、ナッタジの僕と同じ立場だった子供たちの中でも特に仲が良くて、不名誉ながらこの3人に僕が入って、ナッタジの悪ガキといえば、4人をさす、なんてこともありました。今は・・・卒業、したはず、です、たぶん・・・
で、この元悪ガキ3人が、同行したのは、モーリス先生の護衛のため。
大きな街道を通って王都に来るから、さほど危険はないとはいえ、戦闘能力のないモーリス先生一人では不安。途中で南下するアーチャとカイザーの二人と別れての先生のための護衛チーム、ってわけ。
てことで、モーリス先生、クジ・ナザ・ニーは、トレネーから大きな道沿いに、王都へやってきます。
そのまま、非戦闘員たる治世者養成校の護衛にあたるみたいだね、3人は。
養成校組は前述の通り。
僕、ラッセイ、ドク、バンミ、バフマ、ナハト、だね。
別枠の同行が、モーリス先生、クジ・ナザ・ニー。
別行動で、ゴーダン、ミランダ、アーチャ。
ちなみにアンナは王都でレーゼのお守り兼パクサ兄様との連絡役。
えっとね、僕を中心として、アンナ、ママ、ドク、アーチャに関しては念話でお話しが出来るんだ。
で、僕を介さなくても、地球のモールス信号を応用した通信手段を数年前にドクとカイザーたちで開発してる。ある程度の魔力がいるんでなかなか普及は難しいけど、僕らの仲間内ではすっかり馴染んだ通信手段だし、一応、国にも魔道具として進呈して、開発も手伝ってるから、魔導師の中の一部隊として通信隊を作りつつあるんだ。
まぁ、そんな感じで、分かれてても、通信手段は確保している宵の明星。
ていうか、通信が便利なように人を分けたとも言うけどね。
各地にいる仲間たちと、ああだこうだとお互いつめながら、大人数になってしまった遠征訓練参加者の安全を考えつつの、調査行。
ちょっぴり不安だけど、でもやっぱり冒険者としては、ワクワクどきどきの計画に、僕は見たことのない場所を想像して、毎日が楽しみです。
早く出発日にならないかなぁ。
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