第41話 計画はあくまで計画・・・・(後)

 ポリア姉様に、従者共々、おうち=お城に来るようにって言われて、学校後に訪れた僕たち。

 お城に着いたら、三兄弟そろい踏み。

 ちょうど、プジョー兄様が、パクサ兄様に何か言ってる模様。姉様は、プジョー兄様の腕に抱きついて、長兄の応援、かな?


 あれ?ラッセイもいるの?

 どうやらパクサ兄様とラッセイでについてお話し合いをしていたところ、プジョー兄様がおうち(=お城)でお話ししよう、って連れてきちゃったみたい。

 で、そのお話し合いってのが、まさに演習旅行の件だったってこと。


 近々、演習旅行と称して、怪しい生徒を連れて南部へと行こうという話になってたんだけどね、治世者養成校の僕が剣使養成校の生徒を率いて行軍する演習って形にして、その引率がラッセイってところまでは、僕ら宵の明星チームでは決めていて、その最終調整をパクサ兄様と行ってる最中だったんだ。


 どうやら、事件後になぜか南部と付き合いの深い地方商人(レッデゼッサ商会含む)が、行商ルートとして、王都を迂回して南部へ、なんて行動を取ってるようだ、っていうのを、商業ギルド調査班が見つけてきたってのも、南部へ行ってみるか、ってなった理由でもあるんだけどね。

 だって、わざわざ王都経由の意味がない地方もあるんだよ。トレネー領のレッデゼッサ商会みたいにね。


 

 演習旅行のうたい文句としては、「南部に小さい王子を連れて行軍するから、南部への道になれている南部出身者を集めました」、なんて形を作るらしい。誰が小さい王子だよ、っていう僕の抗議はスルーされて、いよいよ、日程と人選の調整のお話し合い真っ最中、ってことだったらしいんだけど・・・・


 どうやら、学校内で姉様がプジョー兄様に、事件の進捗とかを教えろって迫ったらしい。プジョー兄様も僕らが南部行きを考えてそうってことだけは知っていたみたいで、それを妹に漏らしちゃったんだろうね。

 自分も行く、って言い出しちゃった。


 あのね、この養成校。入学には試験があるけど、卒業は御勝手に、って感じなんだよね。でね、どんな授業を受けるかもある程度自由。最低この授業で先生が合格を出した人しか受けられません、っていう上級コース的な授業はあるけどね、それ以外は生徒の自主性と先生の工夫に任されている。あ、先生がこんな感じの授業するよってのは告知されていて、受講者が少ない先生はお役御免になっていく、そんなシステムです。授業の難易度もあるから、少ないっていっても、その設定は授業ごとに違うんだけどね。


 で、です。

 僕と姉様。当然、姉様の方が受けられる授業は多い。「初めての人限定」なんていう括りでも作らない限り、僕が受けられる授業は姉様も受けられるんです。理屈ではね。

 てことで、僕の参加する、そのに姉様も参加する、ってごねちゃったみたい。

 お城で僕に、僕が何をしようか問い詰める気満々だった姉様の思惑は、思わぬところでとっくに叶い、次はパクサ兄様の説得が必要、ってことでの、プジョー兄様の出番。

 なんかね、プジョー兄様としては、妹と一緒に自分も行きたいなぁ、って思っちゃったらしいです。で話し合い中のパクサ兄様、そしてそこにいたラッセイを引っ張って、お城に戻ってきたんだって。



 当然、僕とパクサ兄様は大反対しましたよ。

 だって、危険かも知れないでしょ?王族二人、連れて行けるわけないじゃん!

 そうしたらね、プジョー兄様が、遠征の授業は人気があるから、参加できる人を始めに決めちゃうのは、学校の規則的にまずい、って言い出したんだ。なんでも、みんな平等に学べるっていう趣旨に反しちゃう、らしいです。

 「それにね、決め打ちしてる南部の生徒だけど、全員が全員関係者か分からないだろう?もし関係のない生徒が混ざっているんだったら、作戦遂行中のラッセイ卿だけじゃ生徒の保護監督はまかなえないんじゃないかな?もう一人引率は必須だね。」


 このプジョー兄様の説得に、ラッセイはそれもそうかって、簡単に頷いちゃった。


 「それにね、ナハト君だっけ?南部の貴族主義にアレクが負けないよう教育するために君はわざわざ来てくれたんだよね。もちろんその教育は必要だろう。だけど、いっても付け焼き刃。フォローするために兄や姉が近場でいるのも必要だと思わないかい?それにね、アレクへ貴族教育を行うのは、私は大歓迎だよ。王族としての義務は負わないけど、王族として生きる権利はあるんだ。いつでも社交の中心、いいや、私の代わりに王になってくれても構わないんだからね。フフフ。」

 「ダーが王に・・・。」

 「どうだいナハト君。素敵な話じゃないかい?その未来を確保するためにも、君と一緒に、アレクを教育をしようじゃないか。」


 そう言ってナハトに手を差し出したプジョー兄様。


 ナハトってば、固くその手を握りしめたんだ。


 あーあ、これで、ナハト、陥落・・・


 結局、次の日、次回演習旅行概要、として、大々的に養成校全体に告知されることになりました。


 【次回演習旅行について:

  講義内容=行軍と魔物討伐。

  場所=バルボイ領領都および付近の森

  参加資格=野営経験要。魔物討伐経験要。

  備考=バルボイ領出身者に案内特別手当支給。

  引率=治世者養成校プジョー・リンナバル殿下。

     剣使養成校ラッセイ・ナッタジオ。  】

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