第36話 僕のことはいいんだけど・・・
メイドさんにお茶やお菓子を用意して貰って、セリオが連れてきたリコライさん、リーザさんと、4人でのお話しタイムです。
それにしても、学校が始まってまだ数日。もうこんなピンポイントに友人を連れてくるってすごいなぁ、って思ってたら、どうもちょっぴり違ったようで・・・・
なんでも、リッチアーダ商会ってのは、ものすごい大店なんだそう。
それっぽいなぁ、とは思ってたんだ。一応、貢献からってのもあって、貴族の爵位もらってるし。昔は王族からお嫁さんきたらしいし。
それなりの大きな力を持ってはいる、と思ってたんだけどね、僕の想像の何倍も力をもっていたらしいです。
ハハハ。
みんな気さくで優しい人ばかりだからね、そんな偉いって気配、全然なかったんだもん。
小さい頃から、僕を誰が抱っこするか、とか、そんなことで喧嘩している姿しか見てないし、いろいろ、女の人の方が偉いんだなぁ、なんてね。そんな目で見てた。
一番強いのはノアのおばあちゃん。
先代の奥さんだね。
セリオからいったら、ひいおばあさまってやつ。僕からは、ちょっと遠い。ママのひいおばあちゃん。
セリオの方は男親をずっとたどった感じで、僕は女親をずっとたどった感じのつながり。一応、僕らが直接繋がる起点がノアのおばあちゃんかな?
親戚って言えば親戚で、この世界、このぐらいのつながりでも一緒に暮らすのはそんなに珍しくはないそう。あいにく、僕の周りにはそういう人はあまりいなかったけどね。
まぁ、とりあえず、リッチアーダ商会ってのは思ってた以上にすごくて、この国でも5本の指に当然入るし、それは、実力でも歴史でもあてはまるんだって。
だから、もともと商人の世界ではセリオって有名人だったんだそう。
ちなみに、新進気鋭のナッタジ商会も有名で、僕がアレクサンダー・ナッタジだって知ったら、改めて目を見開かれたよ。
当然、リッチアーダ商会のお坊ちゃまセリオ君が連れてくるご友人、それなりの大店の子供たちで、遠く離れたダンシュタなんていうトレネー領の片田舎に本店を置くような小さなお店でも、知識を持ってました。
「ダーは感心なさ過ぎなんだよ。ダーのことは商人ギルドじゃ、公然の秘密なんだからな。もちろん、ナッタジの本当のトップとしてさ。」
セリオの信じられない発言。
トップはママだよ!
「もちろんミミ様だって有名人さ。なんせものすごいスピードでの昇格だ。ギルドの歴史を塗り替えた天才、って一時期すごかったらしいよ。でもさ。ミミ様がナッタジを持ち直したとしても、そんなにもデカくしたのは、ダーの力があってこそだ。あ、勘違いするなよ。いろんな後ろ盾とか関係なく、純粋に商人としてのダーの話だ。」
そういうと、セリオは僕に「この二人はお前のもう一つの家族のことは知らないから。」って耳打ちしたよ。
そりゃそうか。
王子って分かってたら、こんなに気さくに話してくれないだろうし、そもそも女の子って思ったりしないよね。
「なぁ、ほんとうにこの子があのナッタジの麒麟児ってやつなのか?」
リコライさんが、セリオに不思議そうに言ったよ。
「いくらなんでも、小さすぎないか?あ、背とかじゃなくてさ、麒麟児の噂、ってもう5年以上前から聞いてないか?今、10歳だよな?」
不思議そうに頭をひねるリコライさん。
リーザさんはハテナを浮かべてるから、僕の話、そこまで有名じゃない、よね?
「リーゼも知ってるだろ?ナッタジの燻製のこと。あれを作ったのはその麒麟児だっていうぜ。他にも商標を生み出したのもそうだ。今じゃ、有名な大店はみんな使ってるだろ。」
「え、まじか?」
「宣伝袋っていえば、ナッタジの代名詞だしな。あれだって、君、だよね?」
リコライさん、よくご存じで・・・
確かに、5歳ぐらいだったかな?
冒険者の保存食ってさ、無茶苦茶まずいんだよね。
ちなみにこの世界、異世界小説ではメジャーだったマジックバッグなんてものは存在しない。時間空間といった発想がないんだよね。魔法はイメージだからさ、時間や空間を広げるってのも、観念そのものがないから冒険者がそういう系の便利グッズ携えて旅をする、ってのは無理なんだよね。
というのは建前。
一応、存在してます、マジックバッグ。
世界でただ1つのひい爺さんが作ったリュックがそれだ。
リュック自体は普通の市販品、じゃないな。魔物の皮で作らせたオリジナルだけどね。一応、この世界でも普通に存在する方法でできたもの。
そうそう、リュックみたいに布とかの鞄を背負うってのは昔はなかったんだって。
ひいじいさんが前世の記憶から作ったのがオリジナルで、それをもとにカイザーっていううちの鍛冶師に作らせたのが、問題のリュックです。
リュック自体も、その当時の冒険者界隈を賑わせたらしいよ。
両腕を通す形の背負い袋。今じゃ冒険者の定番です。
まぁ、それはいいや。
保存食ってのはね、ほんとおいしくないんだけど、持ち運ぶには仕方がない。塩も高いから本当にからっからに干すだけの干し肉がメインなんだ。下味をつけようって発想すらなかったのが不思議だけどさ。
うちのパーティには、ひいじいさんのリュックがある。世界唯一のマジックバッグがね。
だけど、これのことを知らない人達と旅をするなら、隠す必要があるんだ。なんせ唯一無二、だからさ。盗まれちゃ大変。てことは、本当はそんなにはない。
誰でも入れられるけど、出すのは僕にしか出来ないんだ。盗むなら僕ごとじゃないとね。って、これもバレちゃダメな理由でもあります。
あとは、単純に、もしバッグの中に生きた人間が落ちちゃうとね、すごく大変。ていうか命はありません。
バッグの中は人工的、ううん違うか精霊工的っていうべき?ややこしいか。
えっとね、精霊が管理していてね、異空間になっているんだけどね、先代の所有者であるひいじいさんのイメージ優先で、宇宙空間になっているんだ。まぁ、もどきだけれど。
てことで中は真空です。
絶対零度ってこともないんだろうけど、無茶苦茶寒くて、物はすぐ凍っちゃいます。
なわけで、時間が止まってるわけじゃなくて、急速冷凍されるから、入れちゃえば新鮮だし、温めればレンチンなみの威力の鮮度。生きてる物も死んじゃいます。
てことで、間違って人間が落ちたら、一瞬で凍っちゃうんだ。
ただし契約者の僕だけは別。
精霊がそのあたりは保護してくれるんだよね。
それに、僕の魔力が自動で全身をコーティングしてくれるから、多少は精霊の力がなくても息苦しいってだけで死なないけどね。
ていうか、ここの精霊、このレベルの魔力がないと、主とは認めてくれない。この中で死なないこと、それが主になる条件の1つだって聞いた時には、背筋が凍ったよ。
てことはどうでも良くて・・・・
まぁ、他の人と旅に出たら、リュックの恩恵は受けられず、みんなと同じようにくそまずい干し肉をかじらなきゃならなかったんだ。
その時ね、他にも保存方法なんていくらでもあるのに、ってすっごく不満に思った。
そんなときに思いついたのが燻製すればマシじゃない?ってこと。
当時ナザとかまわりの悪ガキどもをつかって、いろんな木で燻製の実験をしたりして、最終的には、庭にでっかい燻製機を作ったんだ。
あのときは、火をこっそり使ったり、許可されてないところで木や食材探しをしたり、よく叱られたなぁ。
今ではナッタジ印の燻製商品っていえば、トレネー名物にまでなってます。
一番人気は、ナッタジのチーズを使った燻製だよ。もともとナッタジと言えば乳製品、なんだ。
「僕が欲しかったから作っただけだよ。」
だから、そんな尊敬のまなざしは向けないで欲しいんだ。
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