第29話 新しい友達?
どうやら、ラッセイたちが帰ってきたときには、僕は本気モードで寝ちゃってたらしい。言い訳すると、なんだかんだで、魔力をいっぱい使ったため、さすがに疲れちゃったんだ。ガキだから、ってことではないからね。
で、そのまま、リッチアーダの家にバンミに抱きかかえられて帰ってきたんだろう。しかも、そのまま自分のベッドにダイブイン。
だけではなく・・・・
うっ、これは少々恥ずかしいです。
どうやら僕、バンミの胸元を掴んだまま寝ちゃったみたい。
起きたときはギュッと握ってました。
で、僕のベッドに一緒にバンミも転がってるよ。
彼もどうやら一緒に寝てしまったみたい。
なんか小さい子みたいで恥ずかしいなぁ、と猛省してたら、バンミがすぐに目を開けた。
僕が起きた気配で目を覚ましたんだろうね。
で、目を開けて、僕と目があったら、ニヤッと意地悪な笑みを浮かべたよ。
「よぉ、赤ちゃんダー。お目覚めでチュか。」
「う・・・うっせーよ。」
ゴチン。
頭に頭をぶつけてきたよ。
「痛ッ。」
「そういう悪い言葉使ったら、ミミ様が泣くぞ。」
「・・ママの前で使うわけ無いじゃない。」
「誰の前でも、だ。」
「チッ。」
「ダー。」
「分かってるよ。でもさ。暴力はダメなんだからね。」
「こんなのは暴力って言わないの。それとも今のみんなに告げ口しようかなぁ。」
「わっ、ごめんって。」
「ハハ、言わないよ。それと・・・ありがとな。」
「え?」
「俺のこと慰めてくれたんだろ?もう大丈夫だから。俺はちゃんと、自分の好きな場所にいる。」
「・・・うん。」
オシッ、と言いながら、バンミは布団を跳ね上げて、寝た姿勢から座ったよ。
あ、耳が赤い。
「ちょっ、何にやけてんだよ。夕飯までにはまだあるし、風呂行くぞ。ウリウリ・・・」
ウリウリ言いながらほっぺグリグリも暴力だからね!
僕らはワイワイ騒ぎながら、一緒にお風呂に行ったんだ。
お風呂から上がったら、ちょうど夕飯の時間だったみたい。
いつもみたいにみんなで食べようね、って感じでダイニングに行ったんだけど・・・・あれ?
うちにいる人は基本的には一緒に食べるんだ。
今日は当主のトーマさんとその息子のサンジさん、お嫁さんのルーカスさんはまだ帰ってないみたい。
二人の子供のセリオとピーレ、そしてサンジさんの弟で一時帰宅中のルーカスさん、リッチアーダ家の人はそんな感じ。
宵の明星は、さっきまで一緒だったみんなとママ、それにママに抱かれた弟のレーゼ、あとはアンナ。
ナザはどっかいったのかな?ん?うちの商会の人と出かけた?あっちへ泊まるんだ?へぇ。なんて会話をしつつ席に着こうとしたら、
誰?
2人ほど知らない人?
って、あ、知ってたよ。えっとディルさんとリークさん、だったっけ?盾の人とおつきの魔導師さん。
どうして?
「南部の話を聞くのに連れてきたんだ。あんまり外で話せそうにないしね。」
僕が戸惑っていると、バンミが耳打ちしてくれたよ。
いつの間にか、ラッセイと仲良くしてる。一応先生と生徒で知ってはいたようだし、ダンジョンの時より、ピリピリ感ないね。でも・・・
「ガイガムは良かったの?」
思わずバンミに聞いたけど、どうやらそれが耳に入ったらしい。
「殿下、おはようございます。あの坊ちゃんのお守りは、本意じゃないんで。」
ちょっぴりからかいの雰囲気を含んでリークさんが言ったよ。
眠りこけてたのは、魔力使い過ぎたからだからね。いっつも抱っこなんてしてないよ。えっと・・・ほとんど・・・たまにしか・・・必要な時だけ・・・しか・・・
「彼の言うとおりです。」
ディルさんが立ちあがって、言った。
「あらためて、殿下。私はバルボイ領はガリガム・フォノペート伯が甥にあたります、ディル・フィノーラと申します。お見知りおきを。」
「私は、フィノーラ家家令の息子にして、こちらのディル様に仕える魔導師のリークと申します。諸々ご無礼ご容赦に。」
二人は立ちあがって、臣下の礼をとったよ。
こういうの、苦手だなぁ。
「ちょっと、二人とも、そういうのはやめて。僕は単なるダー。冒険者のダーだ。」
「ダー、ちゃんと返礼を。」
僕の言葉に、ちょっと怖い声で、ヨシュアが言ったよ。お稽古したでしょ、って目が言ってる。
でも、知り合いの、とくに子供たちの前で恥ずかしいんだもん。
「ダー!」
うっ。ヨシュアパパの圧がすごい。
はぁ。
僕も立ちあがって、王家のみが許されるっていう、手を前に突き出して頷く動作をした。
本当は肩とか頭とかに手を置くんだ。従者とか自分に命を捧げる、みたいなときにはね。ペットに良い子良い子ってする感じ?
でも簡易だったり、普通にへりくだる、そこまで親しくない人には、ポーズだけ。
言葉とかも、言われたことに対する正解パターンがあるんだけどね、まだちゃんと覚えてはないんだ。そこまで王家の人、する予定ないし。って、これプジョー兄様に言わないでね。礼儀のレッスンするって言いかねないから。
簡易の返礼は手を差し出して、大仰に頷くだけ。
何を言って良いかわかんないときもとりあえず頷けばいいわって、ポリア姉様が教えてくれた。
「ダーって本当に王子様なのよねぇ。素敵。」
とか、キラキラした目で見ながら兄にささやくのはやめてね、ピーレ。マジで恥ずかしいから。
「フフフ。殿下はお言葉はくださらないんで?」
ニヒヒって笑いながらリークさんが言ったよ。
きっと、僕が出来ないの知ってからかってる?
「リーク!申し訳ありません、殿下。彼には後ほどゆっくり言い聞かせますんで。もしお許しいただければ、我々は共に国立の姉妹校の生徒。単なる生徒同士として、接する栄誉をいただければ望外の幸せ。」
部下を後で怒るねっていう、こういう言い方は、偉い人に対していう定番句。ダンジョンでパクサ兄様が怒られてた(って僕もかな?)時の、反対っていうかお目汚しはいたしませんバージョンだね。
で、彼が言ってるのは、普通の生徒同士として話しましょ、ってことでしょ?
面倒くさい貴族のやりとりの、これでも簡易版。
けど、ディルさんは良い人だね。僕が普通にしゃべって欲しいっていう気持ちを汲んでくれてるんだと思う。それが分かった上でからかってくるリークさんはちょっぴり意地悪だ。
「うん。僕たちは同じ生徒同士。普通に話してね。ディルさん、リークさん、よろしく。僕はダーでもアレクでも。ね。」
・・・・
あれ?
えっと・・・・
二人の目がちょっと泳いでる?
何?
うちの人達もなんか苦笑してるし、ゴーダンなんかは、頭抱えてるけど・・・
「ダー。二人にさん付けはやめて上げて。さすがにそれは気の毒よ。」
と、ミランダ。
「え?」
「なぁ、ダー。もし、プライベートな時間にプジョー殿下と無駄話してるとしてさ、いちいちお前のことを、アレクサンダー・ナッタジ・ミ・マジダシオ・タクテリア殿、なんて呼ばれたらどうする?」
と、ラッセイ。
いや、それはないな。怖すぎる。
「そういうことだ。」
ん?どういうこと?
「王族にさん付けで呼ばれるのは、そのぐらい緊張するということです。」
ヨシュアまで・・・
ちなみにミランダとラッセイはもともと貴族の出。ついでにアンナもね。
ヨシュアはそうじゃないから、そんな微妙な機微なんか・・・分かっているようです。はぁ。
「じゃあ、ディルにリーク。普通の友達としてお話ししてね。」
「「御意。」」
・・・・
あー、面倒くさい!!
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