第13話 問題の組み合わせ

 「えっと、どういう話?」

 「おまえ、レッデゼッサって聞いて、何も思いつかなかったのか?」

 僕が聞くと、ゴーダンが不思議そうに言った。

 うーん?

 そういや商会って?

 「おいおいヨシュア。そのへんの教育はお前の担当だろうが。」

 僕の様子を見て、ゴーダンがヨシュアに、呆れたように言った。

 「そうですね。すみません。忙しくて、は言い訳ですね。きちんと教えておきます。」

 と、ヨシュア。

 え?何?知ってなきゃまずい話だったの?

 「レッデゼッサってったら、トレネーでもかなり有名な商会だよ。ダーは見たことなかった?」

 ラッセイが言った。


 トレネーの商会?


 あはは、ギルドは行っても、特に商会を気にしたことないや。

 買い物は屋台の方が多いし・・・

 「はぁ。後でお勉強しようか。とりあえず今重要なのは、そこそこ老舗でそこそこ大きな商会ってこと。先代当主が男爵位を金で買った、と言われてること。分かってると思うけど、爵位を賜った理由としては、国への貢献って形だね。まぁ、そういう形の貴族も多いけど、やはり、純粋に商売ばかりしてると、下に見られるってこともあって、貴族らしい職業に身内を送り込むことにも力を入れている。今日、ダーがやっつけたっていう次男以外にも数名、養成校出身者はいるようだね。」

 と、ヨシュア解説です。

 キラン、と光った眼鏡の奥の目は、ここでは軽く説明だけど、あとできっちりお話ししましょう、って言ってるよ。

 どうやらその程度の情報は、ナザやバンミ、ラッセイでもとっくに知っている情報らしい。ナザが、お前大丈夫か、なんて言いながら小突いてきたのは、ちょっとショックです。

 コレでも一応商家の長男なんですが・・・

 言い訳すると、僕の担当は商品等の開発だし、他にも領主的なこととか貴族的なことっていう、まったく畑違いの勉強だってあるし、まぁ、いろいろと多忙なんだよ、僕・・・



 「まぁ、いい。問題はそこじゃないしな。肝心なのは、マッケンガーとレッデゼッサが繋がってることが分かった、ってことだな。」

 ゴーダンが、つつき合ってるナザと僕を見ながら言った。

 それの何が問題なのかは、そもそもマッケンガーもレッデゼッサもよくわかんない僕からは想像もつかないけどね。

 そんな僕を見て(こんどは僕だけじゃなく、ナザもバンミも分かってなさそうでホッ、です)、ヨシュア辞典発動です。


 「レッデゼッサはとにかくより貴族らしく貴族と関わりたい。まぁ、中央で力が欲しい、と言い換えてもいいでしょう。気をつけるべきは、大貴族や王族とも親交の深い、商会としては新興のナッタジ商会は目の上のたんこぶ、でしょうね。案外、ダーに喧嘩を売るようなことをしてきたのも、その辺りのことを知ってて、ってことかもしれないね。一方マッケンガーですが、彼はバルボイ領出身の貴族だと聞いてます。」

 「バルボイ領?辺境の?」

 僕は首を傾げた。


 僕の住むこの国はタクテリア聖王国って言って、一応王政の国。

 で、王様の命令で各領を領主が治めているって形をとる。

 ちなみに領っていうのはかなりでかいから、全部を一人で見るのは難しい。ていうことで領主が任命するって形で各町とその近辺を治めるのが代官となる。

 一般市民なんかは、代官と領主の違いがよく分かってなくて、代官のことをご領主様、なんて言ったりするのでややこしいけどね。お代官様とご領主様ってのは、一般市民にとっては同じみたいなんだ。正直、僕も、今まで気にもしなかったこと。一応、このシステムは理解してたけど、ね。



 で、僕が産まれたのはトレネー領ダンシュタっていうところ。

 トレネー領主様に命じられたダンシュタ代官が治める領地ってのが、正確な地名?なのかな?

 ちなみに代官がいるような町は塀で囲まれている。で、僕の産まれたのは、その塀の外。ていうか別の村って言った方がいいかも。馬車で半時間近くかかるしね。

 今はそのあたりはナッタジ村、なんて言われてます。



 トレネーは国の中でも比較的広いし、そこそこ経済力だってある町だ。

 この国には、もちろんトレネー以外にもいくつも領がある。

 現治世者養成校の生徒ってそういう意味ではいろんな領から集まってるとも言えるね。

 けど、今話に出ていたバルボイ領。ここの出身者はいないみたいだ。てか、バルボイ領の者が治世者養成校の生徒になるのは非常に希みたい。ほとんどは剣使養成校、たまに魔導師養成校って感じだって聞いたことがある。


 今いるのは王都だけど、王都とその周辺はどこの領にも所属しない、王族直轄地ってされる。時折、領主がいなくなったりして、王族の直轄地になったり、特殊な利権問題で直轄地だったり、の地域はあるけど、まぁ。このあたりは領の名前を冠さない特別な地域。

 ちなみにおおざっぱに言えば王都から西にトレネー領。北東にシーアネマ領、南東にビレディオ領があって、件のバルボイ領は南にある、って感じかな。他にも領があるけど、大きいので言えばそんな感じ。


 バルボイ領ってのは、とっても広いんだけど、広いって言うよりも残りの世界全部、って言った方がいいかもって感じなんだ。

 辺境。

 人はそこをそう呼ぶ。



 我々人類は大陸の北からやってきた。

 正確には海の向こうの大陸から来たんだ。

 で、その領地を広げるために南へ南へと開拓して、人の住める地を探したり作ったりしてきたんだって。

 そして、それは今なお続いている。


 その最先端っていうか、最南端を担当するのが、バルボイ領ってわけ。

 バルボイ領の人は、だからって、北を羨むでもなく、むしろ開拓っていう事業を誇りに思っているんだ、って、僕は習ったよ。

 ここを開拓するトップ、つまり領主はフォノペート伯。一応伯爵だけど、実質公爵扱いで、位が高いんだって。ちなみに公爵ってのは王族を離れた親戚にだけ与えられる称号。一応、僕が王族を離れたら、公爵になるんだそうです。別にそんなのいらないんだけどなぁ・・・


 それはいいとして、バルボイのご領主と国王や皇太子は仲よしだって本人たちが言ってたから、不和、とかはないはず・・・なんだけど、ゴーダン達の様子を見るに、そうでもない、のかなぁ?

 難しい顔で、黙り込む大人たちって、不安をそそるから、やだよね。

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