第5話 剣使養成校の見学(1)
剣使養成校。
この王都の養成校に来るのは、他の地方の養成校を出た人間と貴族の子弟って感じで、2つに分かれる。
服とか、雰囲気もそうだけど、どっちかっていうと年齢かな?
断然貴族の子弟が若い。上級貴族だと10歳~13歳。平民とか下級貴族は13歳~15歳ぐらいに入学するパターンが多いかな。
えっとね、貴族だとね、そこそこ魔法を使える人もいるんだ。
だからね、剣使養成校と魔導師養成校の両方を通う人もいるんだって。
そういう人が10歳くらいから2年ずつ両校へ行く。
領主の子弟とか、その補佐を期待されて治世者養成校の門を叩く人間は、その後に治世者養成校に入る人も多い、んだそうだ。
ちなみに、現治世者養成校だけど、姉様は魔導師養成校卒業してるし、ボナジとチヌオイは両方卒業してる。ソーヤが剣使養成校だけ卒業した、ということです。
そんな話をチラチラ聞きながら、剣使養成校の今日入学した人の初授業を参観してます。入学したばかりの約100人だけじゃなくて、その1.5倍はいる。今日入学した人じゃなくても、もうちょっと初心者クラスで頑張った方が良いよ、っていう人が入ってるんだって。あとは、新教官に興味があって受講したっていう人も、そこそこな数いるようです。
新教官。
ハハハ。
臨時、なんだけどね。
うっすらとした赤茶の髪は日を受けると、磨き上げられた銅の輝き。ちょっと小動物チックなでっかい目で、立っているだけでもさわやかなイケメン。実際、ちょっぴりおつむの弱い熱血系。マンガとかアニメなら主人公間違いなしのヒーロータイプ。まぁ、ヒーローっていうにはそろそろいいお年。でもむちゃくちゃモテてるのは間違いなくて、といっても本人、そう言う意味でも主人公気質っていうか・・・難聴系のね、ハハハ。まぁね本人があんまり色恋沙汰に興味なさそうなんだよねぇ。人ごとながら将来を心配しちゃうよ。
そんなこともあって、さっき挙げた受講生のパターン以外に本人目当ての人もいるのは間違いないだろうなぁ、ってちょっと苦笑いしちゃいます。
うん、僕はこの人をよく知っているんだ。てか、仲間。
うちのパーティメンバーで、名をラッセイ・ナッタジオ男爵、という。
もともとは別の貴族の子弟だったらしいんだけどね・・・
しかも、笑っちゃうことに、今、ここの先生って形で潜入してるけどね、若かりし頃、ここを受験して見事に不合格を勝ち取った人です。
不合格の理由。先生をのしちゃったから、らしい・・・
反則だかなんだか、妙な理屈を付けてきたから、試験官たち(ハハハ、そう、たちです。何やってるんだろうねぇ。)を、ボコボコにして、こっちから蹴ってやった、なんて言ってるけど、真相は、僕はよくわかんない。
そのまま、貴族だったおうちも捨てて、いろいろやって、あこがれだったゴーダンっていう冒険者が傭兵をやってるって知った。で、押しかけて傭兵としてゴーダンの部下になった、なんていう過去を持つ強者です。
そんなこんなで、彼は、僕の仲間であり、兄貴であり、武芸の兄弟子かつ師匠、な感じ。簡単に言えば、家族、ってやつです。
ちなみにこの潜入、僕たちが治世者養成校に生徒や従者として潜入している以外にもラッセイが剣使養成校に、カイザーっていうドワーフが技術者養成校に、医療担当のモーリス先生が医療者養成校に、そしてそもそもここの魔導師養成校の校長って肩書きを持つドクが魔導師養成校に、それぞれ調査のため先生やってるんだ。
うちのパーティってば優秀な人多いから、簡単に先生やってるよ。
てことで、剣使養成校の見学なんだけど・・・
ラッセイ(小さい頃はセイ兄なんて言ってたんだけどね、いろいろあって、今はラッセイって呼んでるんだ。)も先生役がなかなか様になってるじゃない、なんて思いながらなんだかニヤニヤしそうになる口元を頑張って引き締めてたんだけどね、生徒たちは生徒たちで、こっちをチラチラ。
特に僕には視線が多いかなぁ。
幼く見えるし、実際最年少入学らしいからね。
ひょっとしたら他のちゃんとしたお偉いさんの子爵と違って、僕には気品、とかないのかもね。浮いてる、かなぁ?
「どうしたの?」
姉様が、僕のちょっとついてしまったため息に気付いて、声をかけてきたよ。
「うーん。なんか、僕って他の人より見られてるかなぁ、って。やっぱり、出自がにじみ出てるかもね、ハハハ。」
「もう、何言ってるのよ。アレクは誰よりも可愛いし、才能溢れてるのが、にじみ出てるの。だから、みんな気になるんだと思うわ。姉として、誇らしくてよ。」
「そうだよ。アレクは人にない輝きを持っている。みんな圧倒されてるんだと兄様も思うぞ。」
・・・・
親ばかならぬ、兄姉バカ・・・
そんなことを言ってる僕らを、暖かく、違うな、生暖かい感じで同じ学校のみんなが見ているよ。もう、恥ずかしいったら。
僕ら治世者養成校の面々がそんなことをやっている間、もともとの在校生は一生懸命訓練に力を入れてるみたいなんだけど、やっぱり新入生は、気になるみたいだね。だって、僕らが入ってきたときに、つられて敬礼したけど、そのまま説明なしで放置、なんだもん。
もうそろそろ帰って良いのかなぁ。なんてちょうど思ってたときだった。
「教官、質問があります。」
一人の新入生、でも平民じゃないよな、って思う、ちょっと高そうなぴかぴかの鎧に身を包んだ男の子が、全員素振りをする中、手を上げて、そう言ったんだ。
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