まんまと穿たれた!

オレンジと黒のコントラストから始まる、少女をめぐる物語。
優等生である鈴原を評する「絵に描いたような」という表現が、物語の主軸となる色彩と連なっていてとても美しい。結末まで読んでから今一度この表現に立ち戻ってみると、この表現に、さらに奥深い意味があることに気付かされる。
終盤の鈴原が見せるオカルティックな側面の描き方が素晴らしい。
物理的に穴を穿った側である主人公が、決して消えぬ穴を心に穿たれるという構造がおもしろい。読み手の心にも黒々とした穴が穿たれる、濃密な作品だった。