エピローグ
第106話 エピローグ①
翌日のこと。
大学ではオープンキャンパスが開催されて、キャンパスは高校生たちで溢れかえっている。
普段とは違う光景だ。
進学という
そうなるとそれを
しかしどうしたことか、俺はというと頭を抱えて
「ふむ、いい写真ではないか」
「頼むから忘れてください」
訳知り顔で俺の携帯電話の画面を
「まさか盗撮されていたとは……」
「あの中庭は外部から普通に立ち入れるからなぁ、ちと入口は分かりにくいが。周囲の警戒を
「聞いてませんよトラ先輩、どうして
「お前もまた無茶を言うなぁ」
送り主は山本さんである。
ということはつまり、残念ながら関係者各位にすでに周知済みだ。
「しかし、いきなり呼び止められたかと思えば、良いものが見れたものだ」
「勘弁してくださいよ」
「そんなに恥じ入る必要はないだろう。良い記念だぞ」
カラカラと笑う先輩の姿に、これは話の流れが悪いと感じる。だから無理やりに話題を変えることにした。
俺は彼に対して改めて向き直ると頭を下げる。
「それとトラ先輩にはお世話になりましたから、改めて感謝します」
「よせよせ、俺は好き勝手にしただけだ」
どうして俺が今、こうして先輩と二人で歓談しているかというと、彼に
「まあ、俺としても可愛い後輩のためになったというなら気を揉んだ甲斐があった。それで、お前たちはもう大丈夫なのか?」
「ええ、大丈夫です」
「ならば良い」
「ただ昨日の今日なんで、なにかと
「なんだ、まだイチャイチャする気かおのれらは、そうなってくると腹が立つ。ぜひ俺のいないところでやってくれ」
「……先輩、まだ彼女できないんすか?」
「よしきた、その
俺の軽口に「表へ出ろ」と付き合ってくれる先輩はひょうきん者だ。もちろんここは屋外で、こうして冗談をかまして
そのように楽しくやっていると、ふと前方よりこちらを呼ぶ声がする。
「やいトラの字!」
見ると一人の女性がこちらへと手を振って合図をしていた。
彼女もまた大学の先輩であり、隣にいる先輩とよくつるんでいる人だ。ちなみに高橋が彼女のことを
「彼女でいいんじゃないですか、
「ふむ、確かに付き合いは長いが──」
先輩が神妙な様子で尋ねてくる。
「お前だから言うが、俺は『運命の恋』というものに並々ならぬ関心を抱いていてな。どうだろう? お前の目から見て
「年上の先輩から『運命の恋』なんて発言をされたこちらの身にもなってください」
いい年こいて何を言っているんだろうこの人は、と思わなくもなかったが、まさか口にするわけにもいかない。なので「お似合いだとは思いますよ」とだけ言っておいた。
するとのんびりと動く気配を見せないこちらに業を煮やしたように、女性の方の先輩が
「いい加減に持ち場に戻れだとさ」
「大変ですね」
「まあそれなりに報酬は出る」
先輩は大学からの依頼により学生アルバイトとしてオープンキャンパスの運営に関わっていた。その途中で俺が呼び止めたわけだから、これ以上拘束して迷惑をかけるわけにもいかない。
「それじゃあ、俺はこれで」
「おう、
そのように別れようとすると先輩から、ふと何かに気づいたかのように尋ねられた。
「ちなみにお前の
「何を言わせようとしてるんすか」
「ちょっとした
先輩の質問の答えにはすぐに辿り着けるものであったが、それを口にするには
「もちろん世界で一番の恋ですよ」
「それは
先輩は笑って言うと最後に「よかったら後で飯でもどうだ?」と誘ってくれる。しかし俺はそれを丁重に断った。
「なんだ先約でもあったか?」
「ええ、みんな待ってますから」
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