第100話 みんなで恋だ愛だと騒いだ日⑨
「酔ってますか?」
「君が来るまで時間かかったからねー、待ちぼうけしてる間に少しね」
山本さんはそう言ってクイッと
「いやーまさか北海道くんだりにいるとは、さすがは足運びが
「まさかあなたもグルだと思いませんでしたよ」
「んふふ、びっくりしたでしょう。これもあなたのことを思ってのことよ」
「やっぱり酔ってる」
まるで箸が転んでもおかしいとでも言わんばかりにキャッキャと笑う山本さんを見て直感した。そこそこ飲んでるわ、これ。
「山本さんが高橋を連れてったんです?」
「田中ちゃんもいるわよー、私だけじゃ不安だろうし。さっきまで三人で楽しく女子会してたわ」
なるほど、そういうノリで高橋を説きつけたのだろう、田中ちゃんまでまきこんで。この三人の仲は良好と言って
「鈴木とはいつ知り合いに?」
「んー、東京にでてきた日かな。ほら、ここにみんなで昼ごはん食べに来たとき。その後に声をかけられてね。話を聞いてみたら面白そうだったから」
よく初対面の見知らぬ男の
「それじゃあやっとこさ王子様が姿を見せたことだし、
「王子様とか
「だったら
そう言って山本さんは去っていく。それを何とは言わずに見送った後、どうしようもない不安が口から
「……高橋は無事だろうか?」
「何を言ってるんだ、お前は」
そうは言われてもだ。
「高橋の様子はみてなかったのか?」
「知らないな、拘束中はすべて彼女らに任せていた。高橋の安全安心ために協力を頼んだのだから、無事のはずだぞ」
「いや、でもな」
山本さんという人物は素敵な女性だが、
「ちゃーっす、って二人とも起きてたんすね」
「色々と、買ってきましたよ」
考え込んでいると、姿が見えなかった伊藤くんと渡辺くんの二人がやってきた。
どうやら近くのコンビニにて
「ほい、イケメンの兄さんもどうぞっす」
「イケって……ありがとう、君たちは?」
「俺たちゃ、イケメンシネシネ団っすね」
「しね……?」
「ああコイツの言うことは気にしないでください、何も考えてないんで」
鈴木の方にも冷却剤のような小袋が渡される。それを
「それで、どんな風に話が落ち着いたんすか?」
尋ねてくる伊藤くんに現状を説明する。鈴木との決着はついて、現在は高橋を待っている状態にあること。そして何かしら嫌な予感がするということ。すると、あっけらかんとした返答があった。
「そんなに心配する必要なんてないんじゃねっすか」
「いや、そうなんだろうが。うーん……」
どうにも第三者には説明しにくい。山本さんという酔いどれがどれほど突飛な人物であるかは言葉では伝えづらい。
そうすると話を聞いていた渡辺くんから質問を受ける。
「逆に不都合があったとして、何が起きるって言うんです?」
「そっすそっす、ちっとくらい酔ってたところで、人間そこまで
「むしろ変な人代表の佐藤さんがビビるほどの
「変な人って……まあ、そうだといいんだが──」
渡辺くんの言葉に
『は?』
そしてその場の全員が絶句した。
「やーやーお待たせ、いやーお姫様が抵抗するもんだから時間かかっちゃったよ──じゃじゃん、囚われのお姫様だよ、感動の対面だ」
山本さんの言葉の最中にも「んーっんーっ」と唸り声が聞こえてくる。その響きはまるで、身体の自由を奪われ、目隠しと
というか、そのままである。
「えっと高橋……大丈夫か?」
「んんーっ!!」
何を言っているのかはわからないが、
すごいな、全身を
「さあさ、お姫様をかけて私たちと勝負だあっ」
ヒックという、可愛らしいしゃっくりが一つだけ闇夜に響いた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます