第97話 みんなで恋だ愛だと騒いだ日⑥
月日は
なんのこっちゃ。
ただ気持ちは理解できる。
旅に出ると気持ちが
今回の旅路のきっかけは『NTR』そういわゆる『寝取られ』にある。
最近の
人間だって動物であるのだから、その
よしんば浮気をされたとしても奪い返す。
それぐらい
しかし不貞を働いたパートナーに
そして
いつか
しかし
一度でも愛した相手の不幸を望む気持ちが俺には分からない。彼らは、自らは被害者だからと悪いのは相手なのだからと、積極的に
そして旅の中、互いを傷つけあい
何もかもが『もう遅い』のだと。
人生において、取り返しのつかない結果に
さりとて、あやまちの
踏んではいけない
取り戻したいモノなんていくらでもある、どうか叶うのならと
そんな風に、生きる苦しみに
くそ生きづらい世の中だ。
そういうときは、高らかに歌えばいい。突き抜けるほどの
俺が旅の果てに得たモノとは、結局はそんなくだらない
「サトさん、準備バッチシっすよ。いつでも行けるっす」
「やっぱり明日の飛行機に乗るよりかは、車で南下した方が少しは早いみたいですからね、そのためにも次のフェリーに乗り遅れるわけにはいけません。急ぎましょう」
「二人とも、よかったの?」
レンタカーを調達してくれて、そして当然のように東京までの
「函館での用事は?」
「大丈夫っす。俺たち、今回は頭数あわせのお
「すでに連絡も入れてます。あとのことは弁護士先生たちが上手くやってくれますから心配はいりませんよ」
「なんか申し訳ないね、個人的な私用につき合わせて」
「いやいや、何言ってるんすかサトさん」
「僕たちは僕たちの使命をもって東京へと行くわけです」
二人の言い分はこうだ。
うら若い婦女子を監禁したという『鈴木』という男は、その手口から彼らが関わる事件の共犯者である可能性が高いという。確かに、事件の犯人はその全員が逮捕されてはいないという話だった。よって俺と東京まで同行し
まあ、ただの
「なんか久々っすね、三人でドライブすんの」
「今回は僕らも運転変わりますよー」
「ああ、よろしく頼む」
そうして車は走り始める。
「どうせですから、音楽でもかけつつ楽しく行きましょう」
「あ、だったらアレがいいアレが」
「おけっす、アレっすねー」
まるで恐れるものは何もないかのように、車は進む。
ノリノリの音楽がかかった車内の気分は上々だ。
「いーまから一緒に──」
「いまからーアイツを──」
そんな中で男たちの合唱が響き渡る。
『殴りに行こうかー!』
──つまりは『寝取られ』とか『ざまぁ』だとか『もう遅い』なんて
これはそういった物語である。
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