第95話 みんなで恋だ愛だと騒いだ日④
「渡辺くんは彼女さんと、どういったふうに話をつけたの?」
「佐藤さんに
渡辺くんがわだかまる感情もなく答えてくれる。
「彼女が落ち着くまでは話を進めないようにしてます。けど、彼女の気持ち次第ではありますが『やりなおそう』と、そう言うつもりです」
「そうなのか」
「ええ、これも佐藤さんのおかげですよ。マネしましたから」
「よせやい」
そうは言ってくれるが、そのマネされた当人が現在は
そのように
「それで、相談なんだが。さっき言ってた──俺が試してみた方がいいことってのは?」
「はい。根拠もない思いつきなんですけど、それでもいいなら」
「
「わかりました」
俺が頭を下げてお願いすると、渡辺くんも改まって向き直る。
「これは、僕が彼女との関係を決断するために使った手法なんですが──」
「ああ」
そして渡辺くんは
「下半身でモノを考えましょう」
「は?」
思わず間抜けな声を出してしまった。
それから彼の言葉に隠された真意を探るべく、アレコレと脳内にて
「もう一度、頼む」
「ジョニーとの対話が大事です」
答えは同じだった。いや、よりワルくなっている。
思わず伊藤くんへと尋ねてしまう。
「あれか、彼は渡辺くんに変装した伊藤くんかなにか?」
「そんなルパンみたいなことできねっす。つか、俺ならおかしくない発言だと思われてるのが地味にショックすね」
意味がわからない。
いや、言葉の意味としては理解できるが、問題なのはその
これはなにか?
渡辺くんは彼女との
そのように混乱していると、苦笑した伊藤くんが補足してくる。
「まあ、ナベも
そうして「あ、皮ってもシモな意味ではないっすよ」なんて付け加えられる。やかましい。しかし、俺としても二人の友人を疑ってかかることはしたくないので、ここは素直に聞き入れることにした。
「わかった。それで、その
「僕がそうだったんですけど、ゴチャゴチャ考えていると色々と余計なことばかりが
「それは……うん。わかる」
考えれば考えるほどに、
「それであるとき、ふと思ったんです。『
渡辺くんはそこで一度、言葉を区切る。
「だから今度は、問題の核心へと近よろうとしました。より本音に近く、より原始的欲求に」
「ああ、それでジョニーに至ったと」
「そういうことです。結局、
「
最初は不安に思えたが、理屈としては理解できなくもない。だがそれが俺に適した方法であるかは、少しばかり疑問視している。
「そうは言っても、具体的にどうすればいいのやら?」
「思うに、佐藤さんは物事の始まりに思いを巡らすのがいいかと思います」
「始まりとは?」
「ええ、目をつぶってください」
言われるがまま、目をつぶると世界が暗くなる。
「彼女さんがベットの上で不貞を働いてるときを思い起こしましょう」
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