第36話 ナンパとは愛だっ
近寄って様子を
「すいません、うちの連れと何かありました?」
とにもかくにもと介入してみたが、男性はこちらを
渡辺くんもまいってしまったように、こちらを見ている。
俺は心内に「ごめんちょっと待ってな」と謝ると、少し後方へと下がり、二人の仲裁をしようと頑張っていた伊藤くんに事情を聞く。
「いやーサトさん、すんませんっす。トラブっちまいました」
「俺らがやってることもやってることだし、それは仕方ないよ。それでどういう経緯?」
伊藤くんより事情を聞く。
俺よりも先に合流した二人は、ただ俺の帰りを待つだけなのも時間がもったいないと、果敢に女の子へとアタックを続けていたそうだ。
そして、相手も二人組である女性たちへと声をかけた。
すると横合いから突然に口を挟まれたのだという。
「マジ
「まあ惜しむらくは、そのイケメンに非難されてるのが、俺たちだってことなんだけどね」
渡辺くんを責め立てている男性はなかなかの優男である。そして周りを見ると、これだけ騒いでいるのだから、やはり注目されていた。
やっぱり
「それで、なんで渡辺くんが?」
「あー……実はっすね」
相手の男性のたかを
「相手の言葉にちょっと禁句っつーか。ナベにとっちゃ到底、聞き流せないようなこと言われちまって。キレて反論しちまったんす」
意外なことに、いつも
渡辺くんも反論してからしまったと思ったらしく、すぐさまに
そして攻勢は激しさを増していき、現在に至る。
そのような説明を受ける。
「どうするっすかね。俺としては、一発ぶん殴ってトンズラこいちまうのがベストかなって思うんすけど」
「過激だね、伊藤くん。けどそれは最終手段としてとっておこう」
「ういっす」
多分、なんだかんだで相手の男性に対して腹に
とはいえ、そう簡単に解決策は浮かばない。
これは本当にお手上げかもしれない。そう思っているところへ男性の声が聞こえてきた。
「ナンパする奴なんてナンセンスだ。チンピラのすることだ。世の女性たちだって迷惑している。どうせ大した苦労もなく女性の身体を手に入れたいからしているんだろう? 怠惰な上に浅ましい。恥を知りたまえよ、恥をっ」
カチンときた。
今、あの優男はなんと言った?
苦労もなく?
身体のみを狙って?
怠惰な上に浅ましい?
はは、ふざけたこと言う。
お前にわかるか、ゴミを見るような目で
さすがはイケメン様だ。黙っててもチヤホヤされる奴の御高説は痛みいるばかりだ。
「さっサトさん、顔こえぇ……」
「伊藤くん、あのイケメン。泣かそう」
「う、ういっす」
ナンパとは生半可な気持ちでできるものではない。
つまりは愛だっ。
誰になんと言われようとも、そこを譲るつもりはない。
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