第22話 独白③(長崎の少女視点)【改稿済み】
実のところ、その日のことは記憶が
彼を迎えての食事会、その当日のことだ。
とても楽しかったのだ。
私の家に、私の家族と彼がいる。
豪勢な食事に、
並ぶご
そんな
その一言は、その日にあった出来事すべてを吹き飛ばしてしまった。
「ああ、田中ちゃん。明日の観光なんだけど、お休みにしようか」
「え、なんで?」
「明日は午前中ずっと土砂降りの雨らしい。そんな中で連れ回すのは気がひけるしな」
「えー、べつに構わないのに」
彼がかけてくる言葉に、私はもっと遊びたいのだとぶうたれるような口を返す。なんだか声がうわずってしまい、
「まあ、そう言うない。それに明日はしておきたいことがある」
「ん、なになに。佐藤さんは何をしたいって言うのかな?」
なんならお手伝いしてあげよう、そう思って口にした言葉だった。思い返しても嫌になる。私は本当に浮わついていた。すぐ後に、そんな浮かれポンチな自分を恥じることになるとは気付かずに。
そして彼は何気ない様子で、その
「うん。次の街に向かう計画をたてようと思ってさ」
「ぇ……」
冷や水を浴びせるという表現が日本語にはあるが、的を射た言葉だと体感した。その言葉は、痛いほど冷たい水のように、私の体の
私は何を馬鹿なことを。
真っ先にそんな言葉が思い浮かんだ。
最初からわかっていることだった。
彼は『旅人』である。
この地に根ざした人物ではない、
いつかは離れていなくなる……そんな人であったのだから。
馬鹿な私はそんな当然のことを都合よく忘れていた。
それから先の出来事は本当に記憶にない。
私はただ、いつもの自分を演じる機械人形になってしまったから。まるで糸にひかれて踊りまわる
けれどグルグルと回る思考の中で、ただ一つだけ理解できたことがある。
私はよく『外』の世界について気にしていた、『外』の世界にはどんな光景があるのだろうと空想していた。その理由が判明したのだ。
ただ彼が、彼こそが、『外』の世界からやってきた。
それだけのことだった。
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