自転車に乗れた日──長崎にて
第8話 坂の上、坂の街(長崎の少女視点)【改稿済み】
私にとって、自転車に乗る人物というのはフィクションだ。
いや、嘘ついた。
いくら坂の街、長崎だって、自転車に乗れる人ぐらいいる。
ただ圧倒的にその数は少ない。
いつか流行した青春映画を
全部、全部、物語の中での話。
だからこそ自分には
自転車に乗れた日を覚えている人は、世の中にどれぐらいいるのだろう。
意外と感動して記憶しているかもしれない。
いつの間にかに乗れていたからと
そんなふうに、人それぞれに違いない。
ただ私にとっては、一生忘れることができない、かけがえのない
これから先いつだって今日を思い出しては涙する。
もしくは懐かしんで
●
夕暮れどきの坂の上、坂の街。
それを超えた向こうには赤焼けを反射した海面が
意気込んだ私は、緩やかな坂道を自転車で
そしてすぐさま、振り向いた。
遠くから、かけてくる人がいる。
彼は嬉しそうに、やったな、と言った。
私は照れ臭くて、当然でしょう、と可愛くない口を叩いた。
彼は、違いない、と苦笑する。
ポカポカしていた。
きっと夕暮れの光が私を暖めているからだ。
彼の瞳が赤焼けを
彼が、帰ろうか、と言った。
私は、うん、と頷いた。
彼は旅人で、異邦人だ。
いつかは帰るべき場所に行ってしまうことは、最初からわかっていたことだ。だから私が無茶なことを言って彼を困らせるなんて、できるはずがなかった。
私は
それが良かったのか悪かったのか、答えは出ない。
ただずっと、この坂の上にいたいと。
そんな
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