テスト後の自己採点
エンドロール
「千歌ちゃん。今日も来てくれたの?ありがと」
「いらっしゃい。くつろいで言ってね」
妹が退院してから1か月。速水が家に帰らずほとんどの時間を俺の家で過ごしている。
閑が起きた次の日。速水についてきてもらった俺の予想以上に意気投合し、俺抜きで遊びに行くくらいになった。それは歓迎すべきこと。そこまではいい。
母までも意気投合するのは予定外だった。
我が家の食を支配する母が味方するとどうなるのか。家に速水用の食器が用意されるのはもちろん椅子まで用意された。
俺は放っておいたらそのうち、速水用の寝具が我が家に置かれそうで怖い。
俺と速水は付き合ってすらないのに同じ屋根の下。
体を重ねたとは言えハードルが高い。男の悩みが発動する。
学校では速水を煙たがる風潮はなくなってきた。『大人』というこの世界で最も信用されるブランドを持つ俺が仲がいいから悪い奴じゃないってことが広まっている。
それでも友達という人は出来ないけれど……いじめのようなものはなくなった。
速水自身がそれで満足というから俺もそれ以上何もせずに見守っている。
速水の手首の傷も最近は増えずに順調に回復していっている。痕には残ってしまうみたいだけれども……戒めとして認めるしかないと諦めていた。
「ただいま」
「おかえりー!」
妹のうるさいくらい元気な声が聞こえる。
「お邪魔してますー」
日直の仕事をしていて帰りが遅くなってしまう俺を置いていった速水が俺の家にいる。最近はこういうことが多すぎて突っ込むのをやめた。
「ただいま」
父もほどなくして帰ってくる。
「おかえりー!」
「お邪魔してます」
「いらっしゃい。お土産、買ってきたからみんなで食べて。」
ただ家から19キロ先の仕事場から速水の分のお土産も当然のように買ってくる。それくらい速水はこの家に馴染んできている。
速水と話すようになってから毎日楽しいだけではなかっけど確実に何か変わった。
速水と話すようになったきっかけはこの『大人』な目だった。人との関係にビビッて本音を話せなかったのに本音を話せる友を見つけてくれた。
小学生ならできることをできない情けない『大人』を助けてくれるこの『大人』な目。それこそが『大人の条件なのかな』ってふとした時に気づいた。
丸い服従と三角形の自由、それに正二十角形の俺たち 牛寺光 @511150380031011075
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
同じコレクションの次の小説
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます