勲章

 手が痛い。熱い。赤くて、ぷにぷにしてる。

 でも妹の仇を取れたんだ。路地裏から出て、男は警察につれていかれて、俺は連絡先だけ伝えて救急車を待つ。

 救急車を呼ぶのは速水がやってくれた。

「大丈夫?」

「ああ。大丈夫」

 速水に責任を感じさせないように手を動かそうとしたら鈍い痛みがはしった。これ、折れてたりしたら……。勉強しばらく出来ないし、親も子供が短期間で二人とも入院とか笑えないだろう。入院の費用とかも含めて。だから入院はしたくないな。

「…リストカットって気持ちいいの?」

「……最悪だよ。やった後、後悔しか残らないから。」

「そっか。」

「そうだ!言ってなかったね。私、また『子供』になっちゃった。」

 ホテルで「」って言っていたことを思い出す。

「どんな大人だったの?」

 どんな子供になったか気になるよりもどんな大人だったか気になるのは俺だからかこんな世界だからか。

「空気が読めて、大人。私の理想の姿だったもの。」


 この会話をしてて思い出す。俺は速水のことについて何も知らないんだなって。もっとこのたわいもない会話をしていたい。

 そう願っても叶わず、最悪のタイミングで救急車が来る。



「そうだ!連絡先交換しよ。」

 俺から言い出すつもりだったのに言われてしまう。

「これ、私のラインのID。あとで追加しといて。」

 この手でどうやって追加するというのか。でもまぁ頑張ればどうにかなるか。そう思える。




 結局、手はひびが入っていた。

 親には泣きながら「馬鹿」と連呼された。俺もそう思うけど後悔はない。

 腕は動かせないけど……明日から学校には行けるみたいだから、授業に置いてかれる心配はない。でもノートがかけないな……。

 まぁ隣の人に後で写真を送ってもらおう。

 それを見て勉強しよう。そうすれば問題ない。

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