欠席

 普段の平日と同じで満員電車に乗るために人がそれなりにいる駅のホームで待つ。

 今日の目覚めは最悪だった。昨日の夜、余計なことを考え続けたせいで眠った気がしない。それでも親が学費を出してくれているから真面目に学校に行く。

『まもなく、一番線に電車が参ります。黄色い線の内側でお待ちください。』

 いつも通りのアナウンスが響いて電車が来る。

 

 特別なことが何一つないくらい普通な一日。

 学校に着くまでもいつも通りで何もない。いつも通りまともに動けない満員電車に乗って辛い通学をして、いつも通りの駅で降りて、いつも通り歩いて学校まで行く。

 教室に着いてもいつも通りが広がっていた。


 朝のSHRが始まっても学校に来ない速水。ある程度の秩序のあるにぎやかさを持った教室。いつも通り人気のない数学の教員。いつも通り寝ていても、内職をしていても怒らない『大人』な先生。


 ひとつ、今日の出来事で違ったのは速水が遅刻ではなく学校に来なかったこと。速水のことなんて誰も気にしないから、なんで学校を休んだのか気にする人もいない。強いて言えば俺が昨日のこともあったから少し気になるくらい。

 生徒はもちろん先生も誰も気にしない。『俺の隣の空席は空席で当然だ』そんな空気がクラス中、学年中に広まっていたように感じた。


 なんで休んだのかを聞く必要も、意味も何も感じないから先生に何も確認を取らなかった。そして帰るための電車に乗るべく駅に向かう。

 そして昨日と同じ道を通って妹のいる病院に行く。昨日も通った道だから地図アプリを開くまでもなく着くことができた。


 昨日と同じ方法で受付を済ませようとすると、今日いなかった長袖の暑そうな私服姿の速水がいた。

 目があった気がしてけど速水は何も言うことなく一人で出て行く。

 昨日、俺が何も言わずに電車を降りたからふてくされてるんだと思った。





 ……改めて、速水の性格を考えることもせずに。『本当に子供っぽい』とか考えていた。

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