世界観
「ねぇ、さっきの授業、分かんないところあったんだけど教えてくれない?」
休み時間になってすぐに目立たぬように友人と話そうと思って席を立とうと椅子を引いたときに隣の席から声をかけられた。
これが反対側の隣だったら良かったのに、そんなに都合のいいこともなく声をかけてきたのは当然、速水。
「そこ今日の授業の序盤でやったとこ」
『いなかったお前が悪い』そんなニュアンスを含めて言う。
「えー今日の授業、最初からこんな難しいことやったんだ…。でこれどうやって解くの?」
こういう相手の言葉に含まれてるニュアンスを無視するから影口を叩かれる。正直、俺も今物凄くイライラしてる。
人に教えを乞うくらいなら遅刻なんて止めればいいのに。
どうせ夜更かしして寝坊とか、周りと違う自分凄いみたいなどうでもいいことでの遅刻なんだろう。そういうくだらないことを止めれば授業にはついていけるのに。
「でここを代入するとこうなるからこうなるの」
本当に教科書の解き方を音読するだけ。速水のために脳みそを使うのももったいない。
「んー?…多分分かったかな?ありがとう。」
お礼を言っている速水に適当に返事をしてから時計を見るともう授業時間になってしまう。
幸い次の教科の教科書は机の中に入ってるから準備はしなくても大丈夫。
そのことを確認してから少しでも友人と話そうと思い友人がたまっっている窓際に歩いて行く。
「国語って話聞かなくても怒られないから楽だよな~」
そんな次の教科の話をしている。
話しているところに割り込まないように注意しながら俺も話に混ざる。そうやって人の目を気にしながら生きていく。それが一番いいに決まってる。
今日の放課後までは平和だった。昨日までと全く同じことを繰り返して、時々二日前のことを思い出しては何も感じていないふりをする。大体同じだった。帰りのLHRが終わってあとは帰るだけという一番気楽な時間に速水に話しかけられるまでは。
「ねぇ。君の『大人』になったんだよね?さっき話してるの聞こえてきた。」
確かにさっきの、帰りのLHRが始まる前にそのことを少しだけ話した。
でもそれは速水とじゃない。別のクラスメートと話してただけ。『盗み聞き』。
気分はよくないけれど、ここでそのことを指摘してもどうにもならないからその言葉は飲み込む。
「『大人』になったけどなに?」
「なんでなれたの?」
…なんで。
もしも、昨日のことが『大人』になれた一線だとするならば…。
「俺はお前みたいな性格じゃないから」
それしかない。
「えーじゃあ私は『大人』になれない?」
「なれないでしょ。」
それこそ天変地異が起きない限りに。
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