丸い服従と三角形の自由、それに正二十角形の俺たち
牛寺光
問1.大人と子供に境界線を引きなさい
(1)自分を大人と定義しなさい。
大人の世界
「お前、昨日『大人』になったって本当かよ」
「ん。なんか納得いかないけど……。」
「お前、どんな才能になった?」
「なんか暗いところとか、離れたところを見る能力」
「お~めっちゃ使い勝手よさそうじゃん」
…馴れ馴れしい。話したこともないようなクラスメートが
小学校の頃はすぐに口に出せていた素直な言葉がいつからか言葉に出来なくなる。
現代社会に厳密な記録が残る前から『
これを研究する学者は『大人への階段を上ったことで、脳に何らかの影響が出た』のだと言う。
俺は大人にはなりたくなかった。
世界を動かして、世界を壊していくのはいつだって大人で、子供はその影響を受けるだけ。被害者でいるうちは良かった。
出来もしない、やりもしないことを何も影響のないものとして文句を言っていればよかったから。
でも『加害者側』に立ったから分かることがある。
例えば『大人』は敢えてそれをやろうとしたんじゃなくて、もっとずっと先までみてこうしたんだと分かる。
でも納得は出来ない。それも流れに逆らえずに流されていくしか出来ない。
そんなことを考えながら特別仲良くもしたくないクラスメートに話を合わせて笑う。この世の中笑っても福はやってこない。ただ不幸がやってこないだけで。
『がらがらが、ら』
学校が始まってからもう二時間がたった授業中。
そこには今日朝のホームルームに居なかった女生徒だった。
「速水。今何時間だと思ってるんだ!」
「あはは。サーセン」
「もういい。後で生徒指導室に来い」
彼女のことを一言で表すなら『小学生のよう』。
空気は読めてるのに自分の思ったことは言わないと気が済まない。
規則より自分のやりたいことが優先。
例えば、今は夏で暑くて速水以外の人は半袖なのに速水だけは長袖に冷えピタという何がしたいのかわからない格好。
そんな周りに一切合わせずに自分のしたいことをする、社会では最も異端者といわれる人。
そんな速水は授業を中断したのも気にせずに自分の学校から借りてるロッカーに荷物を取りに行ってる。
そして目当ての物が見つかったようで大量の教科書を持って俺の隣の空席に歩いてくる。
『がらがらー』
「授業中なんだからもう少し静かに椅子をひけ!」
「あ、確かに」
『がった』
「ごめんなさい。」
わざわざ立ち上がって勢いよく頭を下げる。
その他大勢と同じで俺も速水の事が嫌いだ。
休み時間に聞こえてくる陰口だとか、あえて聞こえるように言っている悪口は大体、授業のつまらない教員のものか、この速水のもの。
大体遅刻というのが有り得ない。仮にも学校に通わせてもらってるんだから最大限にそのことに関して恩を返すべきだと考えて当たり前。
そう考えられない速水は相当視野が狭いんだろうなと何の事情も知らないのに勝手に思う。それを自分のことでないかのように感じられてる自分がいる。
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