第2話

その4【肝心な内容】


期待は膨らみまくり、行きの道中もびっくりする程の大金を手に入れたら明日は月曜だが皆んな仕事休んでこのまま香川で一泊してどんちゃん騒ぎでもしよう!とか、現金を車に積みきれなかった場合誰がタクシーで帰るか、とか話が盛り上がりまくっていた。。


とりあえず言われるがまま写メ撮って送って券売機に走っての繰り返し作業でバタバタ。


今のところ的中0。


おかしいな?と考える暇さえなく、次から次へと作業で大忙し。


途中トラブル発生。


そそくさと正人が歩み寄り、「北側のガルフィーのトレーナー着てるオヤジと階段近くのボサボサ頭のオヤジは昭和オヤジの競馬仲間!気をつけろ!」


どうやら「よぉ、遂に弟子ができたか!気張れよぉ、にいちゃん!」と声かけられたそうだ。正人は憤慨していたが俺は笑いを堪えるのが精一杯だった。


そして!


待ちに待った!


9R目にして初の的中!!!!!


当選金額


4000円。。。


ん?なんだこの金額?400万じゃないの?


そしてまたそれから暫く負け続けて迎えた11R。3万円配当の3連単を500円買っていたので、15万円的中!


嬉しいのは嬉しいが、話が違う。

そして次の瞬間今まで感じてた違和感が確信に変わった。


喫煙所の中で両手万歳しながら咥えタバコで何度も何度も飛び跳ねて大喜びしてるオヤジが見えた。


そう、近年2億的中してるはずの昭和オヤジは15万取って大喜びしているのだ。


それを白けた目で何も言えずたちすくむ正人。それを白けた目で見る俺。それを白けた目で見るヒデユキと仲間。LINEの返信は「なんとか的中したね、でも次の日レースで最後だね。。」と。


最終レースはあっけなく惨敗。結果的には少しプラスではあったが、完全に嘘つき昭和ヤクザカブレオヤジが判明した為、その場でチームトップシークレットは解散したのは言うまでもない。


あくる日俺は正人と合流した。案の定、正人は興奮気味に憤慨して「話が違うよな!あの野郎、、俺を騙しやがって、ただじゃおかねぇ!」で話し終わると思いきや、「次こそは必ず!1000万は勝ってもらわないとな!」そう、まだ行く気満々だったのである。

その後何度か俺も付き合わされてWINS高松を訪れたが、全て惨敗。


それでも帰り道中はオヤジは正人に「まさちゃん!次こそは!次こそは必ず勝たすから!億狙ってるから!行こうよ!」と誘われてるらしい。


予想に忙しく買う時間を省くだけではなく、常連の場外馬券売り場の奴等に弟子が出来たと自慢したかった、ただの友達の居ない惨めすぎる嘘つきオヤジだったのだ。


月日は流れ、そのうち正人からも昭和オヤジの話題も出なくなったのでいい加減諦めたようだ。


がしかし!実はその何度か行ってた高松の時、いや初日からだったが、早い段階であのオヤジが嘘つきとゆうのは見抜いてた俺はわからないながらも何となくこの馬、来そうとか予想しながら少額ではあるが的中させていたのだ。

その当たった時の「よしっ!!」と隠れてガッツポーズしたときの嬉しさ、喜びが脳裏に焼きつき、既に病みつきになっていた。


  その5【競馬の真の面白さ】


自営の仕事柄、曜日とは関係ない生活を20年以上しているので、サラリーマンの様に週末を楽しみに金曜日まで仕事を頑張る!とか感覚になった事がない。


だが近年曜日感覚が蘇っている。なぜなら、木曜日夕方に枠順発表され、金曜日から予想を組み立て始め、土曜日はウォーミングアップがてら軽く競馬しながら、日曜日メインレースに向けて土曜夜から頭の中は競馬一色になるのだ。

競馬ファンなら理解してくれるだろう。


そう、今となっては競馬が生き甲斐の生活に染まっているのだ。


まだまだ未熟者な俺が言うのは烏滸がましいが競馬は兎に角奥深い。


一言に馬の持つ能力と言えど、血統、距離適性、馬場適正、右回り左回り、ダート芝、厩舎陣営の戦略、騎手との相性、当日の馬場状況、直前のパドック、返し馬、馬体重の増減と情報盛り沢山、これは一部であって、まだまだ調べに調べまくるのだ。


もう抜かりない!完璧に考え抜いて日曜日15時半を迎え、満を持して勝負!→惨敗!の、繰り返し。たまに、当たる。


かと思えば何も知らない者が自分や子供の誕生日を適当に勝って、3連単的中させたり。


勿論当てたいのが前提であるが競馬はこの予想時間が楽しいのだ。


ここ数年は毎週毎週、週末になると必ず連絡を取り合う競馬仲間がいる。


篠田さんは新聞の情報と過去レースから産駒の適正馬を炙り出す。


鷲尾君とはいつも外れたときの騎手の文句を言い合ってストレス発散。


そしてイッペイさんとはガチの予想をギリギリまで連絡取り合って勝ち馬を探し出す。


各々重要視する部分が違うのだ。


俺はというと専ら調教映像を何度も確認する。首の動き、前後脚の筋肉の動き、あしの上がり下がり、スタンス、諸々、、。


馬を見過ぎて、勝ち負けも大事だが、馬そのものが愛おしく思えてくる。


今でこそこのご時世でなかなか競馬場へ行けていないが、阪神競馬場の桜花賞でクロノジェネシスの走りで歓喜したのは今でも鮮明に覚えている。


馬は可愛い。格好良い。たくましい。


俺は5年前から、馬刺しを食べれなくなった。


貴方も犬猫食べる?食べないでしょ?


  

  その6 へ  つづく、、、


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