人生と競馬

@drive-by

第1話

その1【自己採点】


これを読破したのち、あなたはどれ程までに競馬に興味を持ったか、すぐさま調べに入ってJRA登録を開始するのかそれとも読んだだけ、既読スルーするか。


いち競馬ファンからして皆が前者であってほしいと願う。


私が競馬にのめり込んだのは約5年前、ひょんなところからだった。


競馬の歴史は江戸時代末期、実に150年も前からあるらしい。


私なんて昨日今日知ったド素人みたいなもの。



元々ギャンブルは嫌いではなく、若い頃は貧乏なくせになけなしの金を握りしめてパチンコ屋へ通い詰めてた時期だってある。


がしかし借金してまで、首が回らなくなる程のギャンブラーでもない。


金がなけりゃ無いで良い。


それなりな貧困生活も慣れていたからだ。


周りで借金苦で夜逃げしたり、借金取りに毎日追いかけ回されたり、時には自殺を図ったりと散々見てきたのでいわゆる「あちら側」の人間には成ってはいけない、防衛本能は機能していた。


中学生になれば仲間の影響でタバコに興味を持ち、そのうちまだ未成年でも酒を飲んでみたりと早く大人になりたかったのか上からダメ!と言われたらそれをやりたくなる。それでも流れ流れで日々過ごしてても仲間の1人が覚醒剤に手を出したと知ったとき、それを全力で止めて先程の「あちら側」には行かせたくなかった。


聞く耳を持ってくれてこちら側に戻ってきた友達もいれば、流れていったヤツもいる。無論やめれなかったヤツとは縁を切った。


話がそれました。


要はするにある程度のヤンチャはしてきたが、私自身はまともだと思って今も生きている。



 その2【怪しい昭和ヤクザ風オヤジ】



先程ひょんなところから、といったがそのひょんな、お話。


今から5年前のこと、20年来の友達正人が隣町で小さな、それでも食材に拘ったそれは美味しい居酒屋「まっさと屋」を経営している。


ある日正人が「今さぁ、すげぇ怪しいおっさんがよく飲みにきてくれてるんだよ」と。

見た目は一昔前の昭和なヤクザな風貌で安っぽいジャンパーを羽織り、いつも生ビール1杯とつまみを少々だけ食べて帰るんだが、まさちゃんまさちゃんとやけに気に入られて。。。

驚いたのが毎回会話の内容で、、

「まさちゃんさぁ、俺また競馬で勝っちゃったよ、先週はたったの200万だけどさ!」


「えっ!?に、に、200!?」


「うん、たったの200ね。俺ここ数年で2億くらい当ててるから」と。。。


一瞬時が止まったかのように固まったらしい。少し冷静になった正人は「お客さんそりゃ無いわぁ、いくらなんでも2億なんて」と苦笑いするもその昭和オヤジは


「いや本当!本当の本当!一撃の最高額は1億ちょっとでその日にそこの場外馬券売り場に金が集まらなかったから後日行かされてセキュリティつきでスーツケースに現金詰めて帰ったよ!」


正人は生唾を飲み込み饒舌になったほろ酔いの昭和オヤジに耳を傾けた。


真剣な正人にほろ酔い昭和オヤジは畳み掛けるようにギャンブル武勇伝を嘘か誠かはさておき、マシンガンの如く喋り始めた。


「俺はこの年でまだ独りもんだ。それでもこの先結婚するつもりは、ない!彼女は3人いるけどね。其々に現金2千万ずつ持たせてある。あとは母親にマンションを買ってあげて、残りの金は全部家のタンスの中さ!」


正人はこれを知って先ず思った事を質問した


「なんでウチにいつもきてくれるの?正直それだけの金があればもっと美味しいものを食べて、良い格好して、車だって軽四じゃなくて高級車に乗ればよくない?」


そう、冒頭にも話したが昭和オヤジは何とも見窄らしい格好でいつも生ビール1杯とつまみ少々で帰るらしい。聞けば車は古い軽四を1台だけ所有。胡散臭さ満載オヤジなのだ。

それをこの言葉で一変させられた。。。


「まさちゃんねぇ、、それなのよ!金いっぱい持ってそれがやりたいことかい?よく考えてみろよ?そんなの心底楽しいかい?俺は普通に今まで通り工場で汗水流して働いて、仕事終わりに「まっさと屋」で軽く一杯、うまいつまみと。あとはたまに女遊びでまた次の日も仕事。週末の休みに唯一の趣味で場外馬券売り場へ足を運ぶ。

これで十分なのよ。。。」


普通に考えれば納得いかない事だらけだが何故かその時の正人は大きく頷くことしかできなかった。


この人、本物だわ!と。。。


私は冷静にそれを聞いて食い気味で「いや、それ偽物。偽物昭和ヤクザ風オヤジだわ」と返してやりましたが、正人はかなり食いついていたので、じゃあそこまでゆうなら競馬に勝つ証拠を見せてもらおうじゃねぇか、と徐々に競馬の世界へ足を踏み入れる事となっていった。。。


その3【チームトップシークレット結成】


昭和オヤジ曰く1日のレースで2万円の軍資金で勝てるらしい。

正人は昭和オヤジからかなり好かれており、今度一緒に行かないか?と誘われて更に2万ずつ出し合って4万円で、オヤジの選ぶ馬券を正人はひたすら買いに行く。そして当たり馬券、正人のぶんを全て折半、つまり正人は買うだけの仕事で下手すれば大金を手に入れる事ができるのだ。

実際にオヤジからは「ね!まさちゃん!来週行こうね!100勝てば50、1千万勝てば500、億とれば5千万円あげるから!」と言われてるらしい。


オール折半ではなく、オヤジは丸儲けのシステム。例えば100万ずつ当たればオヤジ→150、正人は50とゆう計算になる。


俺はそれを聞いて、半信半疑だが確かめたいのとあわよくば2万円捨てたつもりで自分もそれに乗っかれば?と考えて俺を昭和オヤジに会わせてくれと頼んだ。すると正人は「いや、あのオヤジはくせ者で、俺以外の人間は信用していない。なんなら他に友達なんていそうにない」と言う。


正人としても支持された馬券を買うだけ、とはいえ目の前で半分取られるのは不本意だと考えて、俺に交渉してきた。


「じゃあ買った馬券をオヤジの元へ届ける前にお前に教える。そのまま買ってお前が勝ったら半分よこせ、そうすれば俺は丸儲け、お前は聞いただけ得だろ?」

俺は即答でオッケーした。

何故なら、なるほどネズミ講方式かと瞬時に悟ったからだ。

正人からはこの事は絶対オヤジにバレないように遂行しようぜ。とニヤついていたが既に自分だけ丸儲けしようとしてる正人の目はドルマークにしか見えなかった。

がしかし、まさかその時俺もドルマークになっているとは。。。


正人と別れて直ぐに親友のヒデユキに電話した。「なぁキョーダイ!良い儲け話があるぜ?乗るか?」と。


諸々説明して「その代わりこの話を持ち込んだ俺に取り分は多めに欲しいが、キョーダイに少ない報酬は俺の性分じゃない。一緒だけうまみが欲しいな、なぁキョーダイ、下をつけないか?」とヒデユキも自分の友達を2人誘った。


同じくして俺は同じ内容で東京のケンジと大阪のヒロキにも連絡した。


皆んなが賛同して昭和オヤジと正人は知らないところで俺がリーダーの「チームトップシークレット」が設立された。


そして運命の日曜日がやって来た。


正人からは「くれぐれもオヤジに見つかるなよ」と釘を刺されて決戦のWINS高松に到着した。


そして初めて昭和オヤジの後ろ姿とご対面。

確かに正人の言う通り薄汚い格好で昭和ヤクザな顔してる。その横を子分の如く付いて歩く正人も滑稽でならない。


言ってる間もなく配置についた。


ここでオヤジがどうしても正人を連れてきたかった理由がわかった。本当の理由かはまだわからないが、どうやらオヤジは超がつく程のベビースモーカーで喫煙所から離れる様子がない。どころか喫煙所の椅子に新聞をバッ!と広げると自分は地べたへ座り込み、画面と新聞を睨み付けながらペンを持ち常に咥えタバコで仰々しく予想を始めた。

そして居座ったのを確認した俺は喫煙所のオヤジから死角になる柱の影で、更に券売機から対角線上にスタンバイした。

正人は俺の位置を確認し、目が合うと軽く頷いた。

そしてチームトップシークレットのヒデユキ達もオヤジと正人からの死角から俺を見つけてスタンバイ完了。東京と大阪では俺のLINE待ちとなり、全てのセッティングが完了した。


この日は東京、京都、小倉と3ヶ所で競馬が行われており、3レース目で到着するやいなや全レースを買っていくとゆう、オヤジの怒涛のスペシャル予想が幕を開けた。


ギリのギリまで咥えタバコで睨みつけながら予想して、締め切り1分前のベルが鳴ってから正人は小走りに券売機へ、戻る道中柱に隠れた俺に馬券を出してすかさず写メをパシャリ!正人は何食わぬ顔で喫煙所へ戻る。俺の仕事はここからバレないようにヒデユキ達が写メ、と同時に東京、大阪へLINE連絡。そして皆んなが同じ買い目を購入。これを僅か1分以内で3ヶ所のレースなので約5分置きに目まぐるしく動く。


さぁ、大金稼ぎの始まりだぁ!!!



  その4 へ  つづく、、、

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