第7話 願いと笑顔

「でもな、蓮、じいじから1つお願いがあるんや。」


「なに?」


「美大行きたいゆうとったやろ、あれ、諦めないでほしいんや」


心臓を鷲掴みにされたような感覚だった。俺だって諦めたくないけど、でも、


「この腕じゃもう無理だよ。普通に働くこともできない。」


「わしの若いころは右利きしか許されんくてなぁ。」


「急に何の話?」


「わしは生まれつき左利きだったから、直すのに苦労したんよ」


え、まさか?


「わしの事家族と言ってくれるなら、左手でも絵が描けると思わんか?」


じいじは少年のような笑顔でニカッと笑った。初めて見るじいじの笑顔になぜかこちらまで笑えてきた。


「それ、本気で言ってるのじいじ。」


「もちろん本気だとも。とにかく、やってみぃよ。」


今回のじいじのその言葉は、初めて勇気が出る言葉に感じられた。


「やりたいことはドンドン挑戦してほしい。だからわしが蓮と名付けたんよ。」


「え、俺の名前ってじいじがつけたの。」


「そうや、挑戦はチャレンジっていうやろ。だから真ん中の文字とってレンや。」


まさか名付けたのがじいじだとは思わなかった。こんな直球な名付け方あるのかよ。でも、それを聞いて初めて自分の名前も悪くないと思えた。


「だからって同じ漢字2回使うことなかったのになぁ。じいじはなんで長男なのに五郎ってついてるの?」


「わからん。」


「わからんのかい。」


顔を見て笑い合った。こんなにあったかい気持ちは初めてだった。


「なぁ蓮、わしももう長くない。最後に3つだけ伝えさせてくれや。」


「なんだよ急に。縁起でもない。」


「まぁええやんか。この3つだけはこの先もずっと忘れないでほしいんよ。まず1つ目に---」

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