第84話

 僕の強さの根底。

 それはなにか。

 

 生まれ持った僕の頭脳だ。

 

 自らの天才性故に、この世の全てを理解しそれを応用する技術を生み出した。この技術を理解し、完全に行使出来るのは僕だけ。

 だからこそ、僕は最強の存在の片割れとなっている。


 では、アレーヌの強さはなにか?

 何故この世の全てを理解した僕ですら作れない『天剣』なんというものが存在しているのか。

 その理由は簡単である。

 アレーヌは巫女と呼ばれる存在なのだ。この世界そのものの。

 

 アレーヌはこの世界そのものと繋がっているのである。

 世界の持っている膨大なエネルギーをアレーヌは自由に行使出来るのである。そして、そのエネルギーの結晶体が天剣である。

 

 アレーヌは存在そのものが普通とは違う。

 だからこその最強の片割れ。

 

 そんな反則すぎるアレーヌの力だが、一つだけ弱点が存在している。それは、世界と自分の力が連動していることだ。

 だからこそ……アレーヌの天剣は簡単に攻略出来る。


「アァァアア」

 

 唸り声を上げ、獣のように構えている邪神の方へと視線を向ける。


「そろそろ……解放させてやらないとな」

 

 僕は九本の魔剣を仕舞い、アレーヌから受け取った魔剣だけを構える。

 ……この魔剣はアレーヌが僕のために用意してくれたものだ。


「ァ?」

 

 いきなり武器を仕舞った僕に対して邪神は首を傾げる。


「行くよ」

 

 そんな邪神に向かって僕は平然と歩を進める。

 走ることも、突進することも。ただただ普通に歩く。


「アァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 そんな僕に向かって邪神は大地を蹴り、一瞬で距離を詰めてくる。

 一言。それだけですべてが終わる。









「崩界」

 

 

 

 



 音はなかった。

 一瞬でそれは起こる。


 太陽は堕ち、世界は暗闇が降りる。

 死神が踊り、生命の芽吹が消える。

 大地が泣き、地を裂く赫が起きる。

 

 世界が死んだ。……世界の崩壊が始めり、完全消滅のほんの少し前に崩壊は止まった。


「ァ?」 

 

 邪神の手に輝く天剣が崩れ、その身を守る鎧に付与されている光が天へと帰っていく。

 

 世界を分けることが出来るのならば、世界を終わらせることだって出来るだろう?


「終わりだよ」

 

 僕は邪神に向かって魔剣を振り下ろす。





「……ゼ、ロ」 

 

 



 僕の名前を呼ぶアレーヌの声。


「あ……」

 

 声が震える。動きをピタリと止めてしまう。


「ぐふっ」

 

 僕のお腹を天剣が貫いた。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る