第83話

 万物を打ち砕くであろう俺の一撃。

 最強の一撃。


 それが邪神へと直撃した。


 一瞬でここら一体を覆うように魔力が暴れだし、その猛威を振るう。

 大地は砕け、山々は魔力の波へと飲まれ吹き飛ぶ。

 砕けた大地は、吹き飛ばされた山の残骸はゆっくりと僕の長槍と邪神が交わった場所へと集まってきて、一つの大きな玉を作り上げる。

 

 滅びた理は……再度世界を作らんと。

 変化することのない理は何も変わらず平然と世界を作ろうとする。

 

 空間が裂ける。

 

 世界が重なることはない。世界は一つ。椅子は二つもない、

 新しい世界を作ろうとしてる岩石は空間を割り、自分たちの席を、空間を作ろうと動き始める。

 

 新しい世界でさえ作ってしまう。そんな俺の必殺技。

 どんな存在が相手であっても確実に殺す自信がある俺の必殺技は、だがしかし。

 

 邪神を殺せていなかった。

 

 岩石の奥に、邪神のおどおどした力を感じていた。



「アァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア」

 

 

 声が、大きな絶叫が世界を震わせる。

 岩石は崩壊し始め、力を失っていく。

 邪神の力に飲まれ始めたその理は……段々と力を失っていく。

 広がっていた空間の裂け目はゆっくりと閉じていく。

 

 

 世界が揺れた。

 


 岩石が崩れ、奥にいた邪神が姿を現す。 

 触手が揺れるその体を晒す。


「アァァァァァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 そして、咆哮を一つ。

 

 それは容易く世界を揺らした。

 

 邪神の禍々しい力が世界を染め上げていく。

 これ以上無いくらいに邪神の力がその傷口から漏れ出している。


「マジか……」

 

 俺はボソリとつぶやく。

 完全に殺すつもりだった俺の一撃。それを耐えられ、俺は言葉を失っていた。あ、あれを耐えるやつがいるのか……。

 さ、流石はアレーヌと言ったところか。


「仕方ない……最後の手段、しかないか」


 本来この手は使いたくはなくなかった。

 確かに俺は人間たちに裏切られた。恨んでいないとは言わない。今でも会話するのには忌避感がある。しかし、だからと言って滅びれば良いというわけではない。

 だが、そんなことを言っている場合ではない、。

  

 俺は今、覚悟を決めた。



 大量に人を殺す覚悟を。

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