第80話

「しっ」


「……アァ」

 

 真紅の天剣と、漆黒の魔剣がぶつかり合う。

 衝撃に、地面が、星が、世界が揺れる。

 全てを震わせるような轟音がこの場に響き渡る。

 魔力が、力が吹き荒れる。


「燃えろ」

 

 発火。黒化。終焉。

 僕の魔法にとって燃え広がる黒炎が辺り一面を包み込む。


「ァ」

 

 万物を溶かす黒炎は……だがしかし、アレーヌの身を纏う真紅の鎧に阻まれ何の効果も齎さない。


「水龍」

 

 水。水のないところでこれほどの水魔法。

 世界を包み込むほどの大きさを持った巨大な水龍は、宇宙にまではみ出た水龍は黒炎を包み込んだ。

 水龍の体があらぶり、光が全てを覆う。

 

 水蒸気爆発。

 

 水龍のなかでとてつもない水蒸気爆発が起こっていた。


「魔剣乱雨……法具、解放」

 

 10万を超える魔剣が降り注ぐ。

 空に第二の太陽が輝き、強烈な威力を持つ光を堕とす。

 幾つもの鏡がエネルギーを回収し始め……そして集めたエネルギーを次々とエネルギー砲として撃ち出していく。

 他にも様々な法具たちが火を吹いていた。


「氷柩」

 

 魔法が発動する。水龍が凍りつく。


 ピシッ


 凍りついた水龍に大きなヒビが入る。

 

「ァ」


 そのヒビは信じられないほどの速度で広がっていき……


 パリンッ

 

 あられが吹き荒れ、光が走る。

 真紅の光が煌めく。


「アイギス」

 

 僕は最も硬い法具の盾を作り、その光、天剣の一撃を防ぐ。

 アイギスはあっさりと撃ち抜かれて壊されるが、一瞬の時間だけは稼いでくれる。

 その一瞬の時間があれば十分だ。


「ほい」

 

 一瞬で邪神への背後へと飛んだ僕は魔剣を振るう。


「……」

 

 高速で振り抜かれる天剣を宙に浮かばせている8つの魔剣を使って弾き、両手に握られている魔剣を握る。

 捻じ曲がった天剣が僕の魔剣を弾く。だがしかし、それは一本だけ。天剣は妄り腕に握られている魔剣を弾くので精一杯だった。

 右腕に握られている魔剣が邪神の体を斬り裂いた。

 

「アァァァ!!!」

 

 足が飛んでくる。

 転移でそれを避け、再び背後へと。

 魔剣を振るう。


「……ア」


 天剣が舞う。

 僕の魔剣が弾かれ、僕の体に狙いをすまして天剣が走る。

 8つの魔剣が踊り、それを弾き飛ばす。

 一歩も引かぬ息をする暇もないような、接戦が繰り広げられる。


「……ァ」

 

 地面を大きく蹴り、邪神が一度僕から距離を置いた。

 

「アァ……」

 

 僕が斬り裂いたその傷から、黒いモヤが漏れ出ていた。

 血の代わり、邪神の力そのもの。


「……ふぅー」

 

 僕は一度息を吐き、額の汗を拭う。

 あれだけやって傷一つか……。


「アァァァ」

 

 邪神が小さな声で呻く。

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