第76話
……俺は無言で眺める。
カチャ。
ゆっくりと立ち上がるアレーヌを。
きれいな金髪は白へと染まり、碧眼は真っ赤な瞳へと変貌する。
アレーヌの体を守る鎧は赤く黒く染まり、天剣もきれいな光から赤黒いものへと変貌してしまっていた。
「……やるか」
俺は久しぶりに『管理者権限』をONにする。
この世界は俺が作ったものではないから、上手く行くかどうかが心配だったが……上手く行ってくれたようだ。
「魔剣」
俺は8つの魔剣を召喚して、宙へと浮かべる。
そして、もう一つ。魔剣を召喚して左手に持つ。
右手に持っているのはアレーヌより渡された魔剣である。
「まずは小手調べでもしてみようか」
俺は自身の魔力を解放する。石の破片に長年閉じ込められていた俺の魔力……日差しぶりだが、非常によく馴染んだ。
「前回は裏切られたせいで、負けたからな」
2024年の戦いでは、一緒に邪神を倒すために協力していた地上人共に裏切られ、俺は自身が使った禁忌の術により石へと姿を変わり、アレーヌは一人取り残されるという散々な結果になってしまっている。
「お前の堕ち具合が知りたいよ」
邪神は年月を経ることによって力を落としていく。邪神は生命を吸うことでその力を維持している。生きているだけでその力を浪費していく、
思うように動けなかったであろう邪神のちからは相当落ちていると思って間違いないだろう。
俺は数多の魔剣を召喚する。
天を覆い隠さんばかりの魔剣を。
「ほいしょ」
それを邪神に向かって降らせる。
「……」
魔剣の雨。
それを邪神は自身の手に持っている天剣によって全て弾いていった。
……天剣の強化はさほど多くない……相当邪神の方も力を落としているようだ……その代わりにいつも俺の隣に立っていたアレーヌは邪神に取り込まれてしまったが。
アレーヌよりも俺の方が強いとは言え、だ。
……二人がかりでも完全に倒せなかった邪神を相手に、アレーヌをという最強の味方を相手に奪われた状態で、だ。
いや……勝つ。そして、殺す。
アレーヌを一人残してしまったのだ。俺は。
その間に数多の苦労を、アレーヌにかけてしまった。何も覚えていなかった俺は、そんなアレーヌに対して『誰だ?』そう問いかけてしまったのだ。
ここで俺が頑張らなければ……アレーヌのパートナーとして失格であろう。
「……ふー」
俺は宙へと浮かべている魔剣を操作しながら、ゆっくりと邪神の元に降りていく。
……俺には……アレーヌが用意してくれた武器があるのだ。
それだけで……十分であろう。
俺は魔剣を見つめながらそう考えた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます