第70話
「うげぇ」
僕は顔をしかめて肉の塊と成り果てた女性たちを眺める。
そんな女性たちは気持ち悪く蠢いていた。
腐った首から何本もの謎の茨が大量に生え、それがまるで人間の顔のように形取る。
九人の化け物でしかなかった女性たちは傷だらけの下半身を動かしてずるずるとゆっくりと僕に向かって進んでくる。
「こっちは僕に任せてよ。これらは僕が相手するよ」
邪神と戦っているアレーヌに向かって僕はそう告げる。
「あぁ。任せたよ!」
それに対してアレーヌは元気よく頷いた。
「ほい」
僕は数多の魔剣を取り出して化け物と成り果てた女性たちに向ける。
「よいしょ」
数百を超える魔剣の雨が彼女たちへと降り注ぐ。
彼女たちはズルズルと無様に体を前進させ続けるだけだった。彼女たちは僕の魔剣を何の抵抗もすることなく受け続けた。
「あ?」
数百を超える魔剣が彼女たちを貫く───────
そう、予想した。
だが、そうはならなかった。
魔剣たちは何故か彼女たちに当たると光となって消えてしまったのだ。
それらの光はまるで彼女たちに吸い込まれているような感じだった。
「何?」
僕は目の前で起こっていることに対して首を傾げる。
「ほい」
今一度一振りの魔剣を召喚して彼女たちへと向ける。しかし、その一振りもさきほどと同様に光となって消えてしまった。
「ふむ。……魔剣が効かないのか?」
僕メタかな?
「ふっ」
地を蹴り、僕は一気に肉薄する。
僕の持っている能力が意味を持たないのであれば物理で殴るしか無い。
そうするのが一番簡単だ。
彼女たちのうちの一人に向かって僕は拳を振るう。
「むっ」
僕の拳は受け止められてしまった。
彼女の首から伸びている茨が僕の腕に絡みついてきたのだ。
……面倒だ。
「『黒炎』」
魔法が発動する。
全てを燃やし尽くすまで止まらない漆黒の炎が茨を燃やす。
お?どうやら魔法は使えるようだ。……僕をメタるなら魔法もちゃんとメタるべきじゃないか?
「……」
「遅いよ?」
茨が燃えたことによって解放された腕をくるくると回していた僕に向かって飛びかかってきた化け物と成り果てた彼女の一人のぐちゃぐちゃのお腹を蹴り飛ばす。
「……遅いんだよなぁ」
その後も続々と彼女たちは僕に飛びかかってくるのだがその動きはあまりにも遅すぎた。
茨は黒炎で燃やし、物理で一方的に殴り続ける。ワンサイドゲーム。
「僕をメタれてなくない?」
この子達は僕のメタキャラとして存在しているのかと思ったが……それにしてはあまりにも弱すぎた。
……もしかして魔剣の無効化は僕と何の関係も、ない?
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