第69話

「あ……」

 

 僕がフォーメーションCが何なのか。わからないままアレーヌは動き始める。

 天剣を発動させたアレーヌは邪神へと斬りかかる。

 

「……えいや!」

 

 僕は考えるのを辞め、いきなり突っ込んだアレーヌの補助に回ることにした。


 魔剣、法具を駆使して天剣を振るうアレーヌを補助する。

 それに対して邪神はふよふよと浮かぶ石の破片を自由自在に動かし、それらの攻撃を全て弾いていく。


「……魔剣」

 

 ノイズの入った、聞くもの全てに頭痛を齎すような声で、邪神は呟く。

 そして、邪神の前に姿を表したのは一振りの魔剣。


「は?」

 

 それを見て僕は無様に口を呆然と開く。

 邪神の前に姿を表した一振りの魔剣。それは僕が召喚する魔剣よりも遥かに強い力を持っていた。


「……倒す」

 

「ちょ……」

 

 ノイズの入った悍ましい声と共にその魔剣は振るわれた。

 それを迎え撃つのはアレーヌが天剣。

 アレーヌの天剣と邪神の持つ魔剣はぶつかり合う。

 

「足りねぇな!」

 

 だが、その魔剣がいくら強大だからといってもアレーヌの天剣に勝てるはずがない。

 アレーヌの使う天剣は何もかもが規格外なのだ。


「まだまだ行くぞッ!」

 

 アレーヌが天剣を振るい、邪神がそれをやり過ごす。

 戦いは一方的なものへと成り果てていた。


「……僕にどうしろと?」

 

 二人の凄まじい戦いを見上げながら僕はポツリと呟く。

 もはや僕に出来ることなど無きに等しかった。 

 一応強化魔法などを使って援護はしているが……僕がしていることなんてそれくらいでしかなかった。

 魔剣や法具を飛ばしたとしても邪魔になるだけだろう。

 一応戦いに割って入る事もできるが……それをしたところで僕とアレーヌが上手く連携出来るとは思わない。

 僕も、アレーヌも強すぎるのだ。


「ふわぁ」


 なので僕は悠長に二人の戦いを眺めていることにした。僕が手を下す必要もないよね?

 うん。


 アレーヌが地面を、空気を蹴って全てを縦横無尽に駆け巡り、邪神が魔剣と石の破片を駆使してなんとか攻撃をしのぐ。

 そんな戦いが延々と繰り返されていた。

 

「ふわぁ」

 

 僕はとうとう暇にすらなり、あくびをしながらぼーっと眺めていた。


「……動け」


 邪神のノイズの入った悍ましい声が響き渡る。


「何に対して?」

 

 動け。邪神のその一言に僕は首を傾げる。

 

 ゴゴゴゴ……。

 

 この洞窟全体が震えだす。


「え?何?」


「な、なんだ?」

 

 ボトッ

 

 血の塊が落ちる。

 それは一つのあらず。

 肉の塊が落ちるその音は計9回響いた。

 

「……お前ら動くのね」

 

 落ちた肉の塊。

 それは九本の十字架に繋がれている、腐った肉の塊と成り果てた……女性たちであった。

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