第67話
腐敗臭。
吐き気を催すようなそんな匂いが充満しているこの空間。
そして、この部屋を支える九本の十字架を模した柱。
そこにはあそこと同じように無惨な姿を晒す肉塊が存在していた。
「酷いな……」
隣で顔を歪め、そう呟いているアレーヌを横目に僕は安堵していた。
「大丈夫か?」
「うん……大丈夫。これならね」
僕はアレーヌの言葉に頷く。
そして、ゆっくりと歩を進め、九本の十字架を模した柱へと近づいていく。
「なんだ……?」
僕は九本の十字架を模した柱に繋がれている女性と思われる人たちの死体を見て首を傾げる。
死体の様子は似たようなものだった。
頭のない断面はすでに膿み始めていて、いや。明らかに膿始めてからかなりの時間が経っているであろう断面は、膿み、腐り始めていてそれが人間の肉だったものには見えない。
お腹の傷もあの時と同様開けられている。
お腹はきれいに切開され、子宮を除く全ての内蔵は下に落とされている。
そして、子宮と思われる部位だけがきれいに真ん中を切開し、お腹の中に残されている。 ……と予想できる。
だが、このお腹もすでに腐敗が進んでいて真っ黒である。
だが、こんなことはどうでもいい。
そんなことよりも目を引くのが、鎖に繋がれている彼女たちの体だ。
ある者は下半身が魚のようで、ある者は体が異様に大きく、ある者は体が異様に小さく、ある者は背中に赤く汚れて輝きを失っている白い羽が見え、ある者は肌の色が緑色であり、ある者は肌が異様なまでに白くて血が瑞々しく、ある者は体が深い毛に覆われ獣のようであり、またある者は腕が三本もあり……。
繋がれている九人のうち、約8名は明らかに人とは思えないような見た目をしていて、人間と思われるような見た目をしているのはたった一人しかいなかった。
「肉塊……」
僕はこの部屋の中央の台の上、いや、台を呑み込むように無秩序に広がり、ピクピクと動いている気持ち悪い肉塊へと視線を向ける。
「あれが死神か?」
顔を歪めたアレーヌが僕に対して疑問の言葉を投げかけてくる。
「さぁ?」
僕はアレーヌの疑問に対して首を傾げた。
あれが何なのか、わからない。
僕が読んだどの文献にもこんな風にピクピクと動く肉塊なんて書かれていなかった。
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