第66話
「はぁはぁはぁ」
「大丈夫……?平気か?」
ようやく落ち着いてきた僕の背中をアレーヌは優しく撫でてくれる。
「うん。ありがとう……」
僕はアレーヌの言葉にお礼を良い、ゆっくりと立ち上がる。
そして、魔法を使って僕が吐瀉物で汚してしまった床とアレーヌ、自分をきれいにする魔法を発動させる。
「大丈夫か?行けるか?」
「うん。……大丈夫。問題ないよ」
僕はアレーヌの言葉に頷く。未だに震えそうになる体を抑えて。
「行って確かめないとね。ほら、行くよ?」
「ちょっ!?」
アレーヌの背中を押して洞窟の中へと入っていく。
「……ゼロがそういうのなら行こうか。……無理そうならいつでも言うんだぞ?邪神なんかよりもお前の百倍大事なんだから。ゼロが全てなのだから」
「うん。わかっているよ……でも、大丈夫だから」
ここで引き下がるという選択は取れない。……この先に何があるのか、それを確かめないといけない……。
コツコツ コツコツ
僕の進む音と、アレーヌの進む音が洞窟の中に響き渡っていく。
その道程で僕とアレーヌに襲いかかってくるような人はいなかった。……この世界には邪神教の人間はいないのかもしれない。
「……大丈夫?」
「うん。大丈夫だから」
僕はアレーヌの言葉に対して頷く。
しばらく僕とアレーヌは洞窟の中をゆっくりと進んでいく。
洞窟の先。
出口と思われる先にほのかな光が見える。
……どうやら扉はないようだ。
ぎゅっ。
見える光は陽の光というのよりも松明の炎が揺らめいているもの、と表現出来るだろう。……陽の光じゃないのだ。松明の炎なのだ。邪神と戦ったあの趣味の悪いところを照らしていたのは松明の炎じゃないか。
……何も心配することなんて、ない。無いんだよ。
「ゼロ……」
「ん?どうしたの?」
何故か驚いたような視線を向けてくるアレーヌに対して僕は首を傾げる。
「いや、なんでも無い。……行こうか」
アレーヌは僕に向かって笑いかけて力強く進んでいってくれる。
僕を先導するように。
洞窟を抜ける。
すると途端に鼻を突き抜くような腐敗臭が、血の匂いが、死の匂いが僕とアレーヌに襲いかかってくる。
「ここ、か?」
「ふぅー」
僕は大きく息を吐く。
安堵で腰が抜けそうになるのをなんとか耐える。
そこにあったのは九本の十字架の形を模していると思われる巨大な柱に支えられた地下空間が広がっていた。
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