第63話

「んー。はぁ」


「……あ。おはよう」

 

 僕はようやく起きて、背筋を伸ばしているアレーヌに声をかける。

 

「あぁ。おはよう……ん?美味しいそうな匂いがしているな」


「あ。今朝食を作っているところだから少しだけ待っていて。もう少しで出来るところだから」


「朝食を作っている!?」

  

 アレーヌが僕の言葉に驚いて立ち上がる。

 眠そうだったその瞳はぱっちりと開かれている。


「うん。待ってて」

 

 僕はキッチンの方へと戻り、最後の仕上げを終わらさせてしまう。


「ふんふんふーん」

 

 物質創造魔法を使って僕とアレーヌ用のお皿を作り出して、魔法を使って料理とお皿を飛ばして盛り付けていく。


「出来たよー」

 

 僕は机の方へと魔法で飛ばして並べていく。


「おぉー!!!」

 

 机に並べられた料理を見てアレーヌが歓声を上げる。

 僕が作ったのは簡単なサンドイッチと、ソーセージだ。

 

「あ、コーヒーも入れよっか」

 

 収納魔法に閉まっている僕お手制のインスタントコーヒーを取り出し、魔法で作ったカップに入れる。そして、魔法で作ったお湯を注いで完成だ。

 いやぁー。やっぱり魔法の使い勝手はすごいなぁ。なんでも出来る。


「じゃあいただきます」


「いただきます!」

 

 僕は机に置かれているサンドイッチへと手を伸ばして口に含む。

 うん。……美味しい……。素晴らしい。

 前世の、地球のサンドイッチを思い出す。僕はサンドイッチがすごい好きだったんだよなぁ。

 はぁー。感動する。


「美味しい……うぅ。それに比べて私は……」


 美味しい美味しいと食べ進めるアレーヌ。そして、昨日の惨状を思い出したアレーヌが顔を俯かせる。


「別に美味しかったけどね。僕は」


「うぅぅ。慰めはいらぬ」


「別に慰めじゃないんだけどなぁ。それにアレーヌは僕と一緒に料理を勉強するんでしょ?ちゃんと成長すれば良いんだよ。慣れないことを初めてそれで簡単に出来る人は怖いよ。……後、せっかく僕が作ったんだから笑顔で食べてほしいな」


「あ!そ、そうだな!すまない……すごく美味しいぞ!」

 

 アレーヌは笑みを浮かべて、サンドイッチを大きな一口で頬張る。


「すごいなぁ。ゼロは」

 

 そして僕の頭を優しく撫でてくれた。


「ん」

 

 気持ちいい。

 こんな感じで僕とアレーヌ朝の時間は流れていく。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る