第62話
「こ、ここが良いかな!」
僕とアレーヌは一つの宿屋の前に止まる。
今、前にある宿屋はまた別の街にある高級宿である。この宿の最大の特徴は家のような部屋。飯屋はないのだけど、その代わりに各部屋に料理を作るためのキッチンがるのだ。
「うん。そうしようか」
僕はアレーヌの言葉に頷く。
「そうしよう、そうしよう」
アレーヌは足早に宿屋の中に入っていた。
その後を僕はついていった。
……ちなみにここに邪神の情報はないらしい。完全に宿屋で料理が出来る宿屋があるのがここだからという単純な理由によるものだ。
うーん。さてはて。一つ疑問に思うことがあるのならば何故この街の地下に大きな空洞があるのだろうか?ということである。
スラム街にあったあの邪神教のアジトがあった空洞と少しばかり似ているような気がするような……。
うん。まぁ興味ないや。そんなことよりアレーヌの手料理だ。
■■■■■
「ど、どうだろうか?」
つい先程までアレーヌによるためらいがちに出されるのは真っ黒な何か。それに加えてなんか明らかに体に悪そうな謎のオーラが出ている。
「や……やっぱりダメだよね……うん。捨てるぞ」
「いや?別に全然平気だよ?」
僕は
何を作りたいのかわからない混沌とした味。そしてそれを覆い隠すような焦げの味。
総評。
美味しい。
「ん。美味しい」
僕は満足げに頷いて食べ進める。
「ほ、本当にか!?ど、どれどれ」
アレーヌは恐る恐る焦げをスプーンで救って口に含む。
「まっずッ!!!」
そして吐いた。
「ダメだ!こんな美味しくないのを食べちゃ!もっと良いのが!捨ててくるよ」
「ダメだよ?贅沢言っちゃ。こんなに美味しいのに」
僕はフォークを使って何かの料理の炭を口に含んだ。
捨てるなんて信じられない。ありえない。何を考えているのだろうか?
「気を使う必要はないんだぞ?」
「別に気を使ってなんてないよ?僕の率直な本心だよ?」
「……ごめん」
「何も謝る必要なんて無いよ?」
「うぅぅ。私がもっとうまく作れていれば……」
別に十分美味しいんだけどね?
「じゃあ美味しく料理を作れるように一緒に料理する?」
「良いのか!」
僕の言葉にアレーヌは目を輝かせる。
「うん。良いよ」
「そうか!約束だぞ!」
「うん。わかった」
喜んでいるアレーヌを横目に僕は再び料理を口にした。
うん。美味しい。
「えぇぇぇぇ!?まだそれを食べるの!?」
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