第60話
「明日に依頼金を貰えるから、その後はこの街を出ていくぞ」
「うん」
僕はアレーヌに言葉に頷く。
「今日はよく寝るんだぞ!それじゃあおやすみ!」
アレーヌが魔道具へと手を伸ばし、光が消える。
この一室を照らしていたのは僕の魔法ではなく魔道具だ。
今僕たちがいるのは最高級宿。ここには普通に魔道具が様々な置かれている。
「ふぅー」
僕はベッドの上に転がり、息を吐く。
柔らかいベッドが僕を包み込んでくれる。
「……」
「ガーガー」
まだおやすみって言ってから一分も経っていないのにも関わらずものすごい寝息を立て始めたアレーヌに驚きつつ、僕は天井を眺める。
「眠れない」
僕はボソリと呟く。
眠い。死ぬほど眠い。今すぐに寝たい。
……だけど、眠れない。
怖い。また悪夢を見るのが。
怖い。まぶたを閉じるのが。
怖い。寝るのが。
怖い。怖い。怖い。
何もかもが怖かった。
そもそもの話……ここは何処?ここは何?なんで僕は全然知らない街に居て、全然知らないことをしているの?
わからない……わからない……。
なんで僕は唐突にご飯を食べれるようになったの?
何もかもがわからない。
もしも手……今、ここが夢だとしたら……一度眠りにつけばまた……元の世界に戻るかも知れない。
そしたら……またクソまずいご飯を食べることになる……。
僕はすでに元の異世界に戻りたくなかった。別に元の異世界には何の思い入れもないし。アレーヌは横にいるし。
もしかしたら眠ることが行けないのかも知れない……一度眠れば味覚が死んでしまうのかもしれない。
何故味覚がおかしくなかったのか、そして治ったのか。それもわからない今、何をするにしても怖かった。
「ガーガー」
隣から大きないびきが聞こえてくる。
僕は体の向きを変え、天井から横へと視線を向ける。
隣。同じベッドで僕の隣で呑気によだれを垂らしながらぐっすりと眠っているアレーヌを眺める。
「ガーガー」
「ふふっ」
大きないびきをかき続けるアレーヌを見て僕は小さな笑い声を漏らす。
隣でこんなに大きないびきをかかれていたら中々眠れないよ。
「大好き」
僕はアレーヌの頬を撫で、こっそりとほっぺにキスをした。
その後にいつもどおり外に出た。剣の練習もしないとね。……流石に剣振ったら味覚がおかしくなるとかないよね……?
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