第56話

 視界が開ける。

 真っ白な光が開けて。


「あ……」


 僕の視線の先。

 地面には気持ち悪く這いずり回っている数多の虫は存在していない。


「あぁ……」

 

 僕の口からは安堵の声が漏れる。

 そして、次にここが何処かを探すために視線を前へと上げる。

 

「ゼロ!」


「え?」

 

 僕はいきなり自分の名前を呼ばれ、驚きの声を上げる。

 そして、声がした方へと振り返る。


「そいつを捕まえて」

 

「ちょっ!?」


 僕は聞き覚えのある……でも、明るい声に従い僕はいきなりのことに慌てつつも、自分の方へと向かってくる化け物を掴んだ。

 その化け物。

 ザリガニを二足歩行にしたかのような化け物。僕の上半身より大きそうな巨大なハサミを僕は掴み、動きを止める。

 魔力も操作し、魔力の糸で化け物の体を絡めていき、動きを封じていく。


「こちらに!」

 

 僕の隣に立っていた男性が僕に向かって袋の口を広げながら見せてくる。

 ……え?明らかに大きさ足りないけど大丈夫なのか?でも、確実に、僕に向かって見せつけられた袋。それを無視するわけにはいかない。


「入れれば良いんだね?」


「はい」

 

 男性は元気よく返事をする。

 なるほどね。信じよう。


「んっ」

 

 僕は化け物を持ち上げ、袋の方に持っていく。

 じたばたと抵抗する化け物を前に僕は地味なダメージを食らいながらも僕は袋の中に押し込んでいく。

 どうやらこれは魔道具なようであきらかにサイズの合わない化け物をすんなりと入れることが出来た。


「のっと」

 

 僕はなんとかその化け物をその袋に仕舞うことに成功する。


「「「わぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああ!!!」」」

 

 それを見て途端に湧き上がる数多の歓声。

 そして───────


「やったな!ゼロ!ナイスだったぜ!」


 僕の名前を呼ぶハスキーな声。


「……っ」


 後ろを振り向くとそこにいるのは一人の高身長の女性。

 肩まで伸ばされた綺麗な金髪に綺麗な碧眼。

 顔立ちはすでにもう何度も見てきているものだ。見間違えるはずがない。

 それでも僕は目の前の女性が

 

 その女性の口元には豪快な笑みが浮かべられていた。


 ……え?


「どうしたんだ?」

 

 呆然としている僕を見てその女性は首を傾げた。

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