第54話
開ける視界。
ブラックアウトした僕の視界に広がっているのは何処かの洞窟。
何処から光が届いているのかはわからないけれど、何故かほのかに光っている洞窟。
「ここは……?」
僕は全然知らない場所に立っている。
こんな状況を前に首を傾げる。
確か僕は邪神を倒して、カミラを殺して……そして邪神の死体が──────
ザーザー
……いっ。
僕は突如として襲いかかってきた頭痛に顔をしかめる。
そして、寝不足のせいもありその場に崩れ落ちてしまう。
「うぇ……」
どちらが前で、どちらが後ろかわからない。……今、僕は……。
「あぁ」
それでも僕はなんとか立ち上がる。
「すぅはぁー」
深呼吸を行い、息を整えて一旦落ち着く。
寝不足のせいでダルいままではあるけど、さっきまでのように前かも、後ろかもわからない。という状態からはなんとか脱した。
歩け─────前へと進め
僕はなんとなく歩かなきゃいけない気がするので歩き出す。
コツコツ
無音の洞窟の中、僕の進む足音だけが響いていた。
「お?」
しばらく無心で歩いていると光が見えてくる。
洞窟内を照らすほのかな光ではなく、強い光が。
「うっ……」
僕は洞窟を抜ける。
それと同時に目に飛び込んできた陽の光を前に、僕は一瞬目を瞑る。
「あぁ」
広がる景色。
さっきまでの暗い殺風景な洞窟ではない。
陽の光に当てられた輝く雄大な野原だった。
見渡す限り緑が続いている。
「あ……」
映る。
辺りを見渡した僕の瞳に。
街路樹くらいの高さの低い木になっている赤い木の実を。
怪しい輝きを放っている赤い木の実を。
「あぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああああああああああああああ!!!」
僕は我を忘れて走る。
─────食え
なぜかはわからない。知らない。
だけど食べなきゃいけない。
あれは美味しいものだ。
そう本能に刻み込まれている。これ以上ないくらいに。
「いただきます」
僕は赤い来の実を口に含んだ。
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