第48話

「ふんっ」

 

 アレーヌが神速の蹴りを放ち、目の前の巨大な扉を蹴破った。


 ドシンッ


 アレーヌの蹴りを受けた巨大な扉は宙を飛び、大きな音をたてて転がった。

 僕たちが地下を進んだ先にあった硬く閉じられた鉄で出来た巨大な扉。

 それが今物理的に開かれた。

 地下。

 地下にある大きな空間。そこは九本の柱と中央の台に近くが光っていて、空間全体を照らしていた。

 

「オェ、オェエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエ」

 

 扉が開かれた共に感じる強烈な腐敗臭。

 血の匂い。死の匂い。

 荒事に慣れていないのか、アキラネ第一王子は強大に吐いてしまった。

 いや、これは仕方のないことだったのかもしれない。

 僕たち一行を出迎えたのはあまりにもひどすぎる惨殺の後。


 ガチャガチャ

 

 アキラネ第一王子の護衛として着いてきていると思われる騎士団も顔を青ざめさせていて、体を大きく震わせている。

 平然としているのは僕とアレーヌだけだ。

 ……僕はこんなに薄情な人間だったかな?

 こんな凄惨な現場を見てなんとも思わないほどサイコパスだった記憶はないのだけど?

 そんなことを思いながら平然と目の前の景色を眺める。


 地下空間を支えていると思われる九本の十字架の形を模していると思われる巨大な柱。

 そこにくくりつけられた首のない九人の裸の女性の遺体。

 頭のない断面はすでに膿み始めていて、ぐちょぐちょだ。

 ……そして、そんな首がよりも目を引くのはその遺体のお腹。

 お腹はきれいに切開され、子宮を除く全ての内蔵は下に落とされている。

 そして、子宮と思われる部位だけがきれいに真ん中を切開し、お腹の中に残されている。……きれいに真ん中だけが開かれた子宮は……何かを取り出したかのように見えた。


「あ……あ……」

 

 盛大に胃の中のものを吐き出し、体を大きく震わせるアキラネ第一王子はこの空間の中央に置かれた台を震えた手で指差す。

 

 最も強い光に照らされた台。

 そこの上にあるのは九人の女性の首。

 その首……その顔は瞳がくり抜かれ、口が大きく開かれていた。

 口。

 大きく開かれたその口が加えているのは赤黒い何か。

 ……真っ赤なもの。赤く、赤く、赤く。

 赤い小さな物体。

 何かわからないその真っ赤なものをよく見てみると、手や足、頭と言えそうなものを確認することが出来る。


 胎児。

 

 その九人の女性たちが口に加えさせられているのは十字架を模した九本の柱にくくりつけられた遺体の子宮から取り出したと思われる胎児、だった。

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