第45話

 しばらく。

 僕たちはアレーヌの騎士団長として自分が今まで何をやってきたのかという話を聞きながら馬車に揺られていた。

 そんな中。


「もうすぐ着きますよ」


 御業台に座っている人が僕たちに向かってそう話す。


「うむ。そうか」

 

 僕の隣に座っているアキラネ第一王子が返事する。

 僕たちが向かっているところ。それはミリア王国に存在している邪神教のアジトがあると言われているスラム街。

 アキラネ第一王子はスラム街で邪神教並びに裏組織の取り締まりなどをするためにスラム街に向かっているらしい。

 まさか目的地まで一緒だとは思わなかった。


「何か情報があると良いんですけどね」

 

 僕はボソリと言葉を漏らす。


「……情報?何かを探しているのか?」


「えぇ。はい。まぁそれが何なのかは教えられないんですけどね」

 

「そう」

 

 僕の言葉にアキラネ第一王子は素直に頷く。

 彼から読み取れる感情。それは巻き込まれたくないという簡単でわかりやすいもの。

 騎士団長、副騎士団長を辞めてまだ探しているもの、災害としか言いようのない存在が探しているものとか確実に厄介ごとだろうからね。


「着きました」

 

 そして馬車が停止する。

 

「はい」

 

 僕たちは馬車から降りる。 

 視界の先。

 そこに広がっているのは薄汚い、淀んだ空気が流れる古びた街だった。 


「では、我々はこれで失礼しますね」


「何?」

 

 僕の一言にアキラネ第一王子は首を傾げる。


「我らとともに行動はしないのか?貴殿たちの目的は邪神教なのであろう?であるのならば二人だけよりも他に協力者がい─────」


 アキラネ第一王子の口から漏れ出す言葉。

 


「必要ありません」」

 

 

 僕はアキラネ第一王子のそれらの言葉を遮り、告げる。はっきりと。

 アキラネ第一王子の申し出の意図。

 アキラネ第一王子の戦力は減ってしまった。そこで僕とアレーヌという戦力を当てにしているところもあるのだろう。

 しかし、そのアキラネ第一王子の申し出。その申し出に込められている感情はこちらへの感謝によるものが大きいのだろう。純粋に協力したいという好意によるものなのだろう。

 だけど、要らないのだ。


「僕とアレーヌは圧倒的な力を持つ者であり、比類するものなき絶対の最強なのです。協力者なんて要りません。協力者なんて足手まといにしかなりません」

 

 僕ははっきりとそう宣言する。

 僕とアレーヌは誇張無く最強だ。レベルが違う。格が違う。次元が違う。

 要らない。すでに満ち足りている。

 僕とアレーヌ。二人だけで全てが揃っている。すでに十分満ち足りている。

 他は不純物でしかない。求めていない。必要としていない。

 二人でいい。二人だけじゃないといけない。

 

 ───────これは僕とアレーヌ。二人の物語なのだから。

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