第43話
僕は目の前で跪いている人たちを眺める。
まぁパッ見だと明らかに馬車を囲んでいる男たち側が悪だよね……。
「アキラネ王子か?」
僕の隣に立っていたアレーヌが高貴な身分だと思われる男の子を見てそうポツリと呟く。
……アキラネ王子。聞いたことはある。
確か僕らがいた国であるアラキア公国の隣国であるミネア王国の第一王子だったはずだ。
……へぇ。この人が第一王子なんだ。
「あなたはアレーヌ騎士団長!?」
高貴な身分だと思われる男の子、アキラネ第一王子が跪いたまま驚きの表情を浮かべる。
「『好きにしていいよ』」
僕は流石に第一王子を跪かせているのは不味いと判断し、彼にだけ自由に動く権利を渡す。
「あ、ありがとうございます」
アキラネ第一王子がゆっくりと立ち上がる。
「私は今や騎士団長ではない。そこの副騎士団長とともに騎士団を辞め、自由に冒険者として動いている身だ」
「えぇぇぇぇえええええええ!?では今はアラキア公国にはあなたがいないと!?」
なんてことのないようなアレーヌの一言にアキラネ第一王子が驚愕の表情を浮かべる。
僕がこの世界に来るよりも前。5年前にアラキア公国とミネア王国とは違う別の隣国、オセニア帝国という最強国家とさえ言われていた国の軍隊をたった一人で壊滅に追い込んだアレーヌの武勇はこの大陸全土に知れ渡っている。
まぁそんなやべぇ人が。
一人で国を、というか僕以外の人類全てを敵に回しても余裕で勝利できるアレーヌが騎士団を辞めて、自由になったという話ならそりゃ驚くよな。
「うむ」
「じゃ、じゃあアラキア公国は……」
震えたアキラネ第一王子の言葉を受けて僕が口を開く。
「あぁ。ご安心を。僕が広めたドクトリンとか魔法の使い方とかあるから他の国と戦争状態になっても負けないと思いますよ。……うちの騎士団の連中はアレーヌとの模擬戦のおかげでこれ以上無いくらいの精鋭兵となっていますから」
「ド、ドクトリン?」
僕の言葉にアラキア第一王子は首を傾げる。
「うちの国のとっておきですね。詳細は話せません」
ドクトリン。戦争計画。戦闘教義。
地味ではあるが、実際の戦争においてはかなりの力を発揮する。例え弱小国であっても優秀なドクトリンと情報網さえあればある程度戦えると思っている。弱者の牙は強者にも届きうる。
核とかいう超兵器がない今の時代なら余計に。……まぁこの世界にはアレーヌという超兵器がいるんだけど。
ドクトリンをとっておきと言っても差し支えないだろう。
「なるほど」
アラキア第一王子が僕の言葉を聞いて納得がいったというように頷いた。
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