第42話
気持ち良い温泉を入った後、次の目的地に向かって森を歩く僕とアレーヌ。
「……本当に離すの辞めないの?」
「うむ」
僕のためらいがちな言葉にアレーヌは一切の迷いなく頷く。
「そっかー」
僕は全てを諦めたように呟いた。アレーヌによってガッチリと抱えられた状態のまま。
……まぁ楽だし良いかぁ。
僕とアレーヌの次の目的地はここから少し離れたところにある邪神教のアジトだ。
邪神教の人間。大昔にこの世界に権限し、悪行の限りを尽くした邪神を信仰しているヤバい奴ら何だそうだ。
激ヤバだね。
邪神。もしかしたらこいつが僕に何か悪さをした原因かも知れない。そんな淡い期待を抱いている。……そもそも邪神が本当にいるのかどうかもわからないけど。
アレーヌは僕を掴んだままゆっくりと歩いていく。
「ねぇ。馬車に乗らない?」
「む?なぜだ?」
「いや。このままだと着くのに時間がかかるじゃん?」
「別に良いだろ?私といるのだから。……そ、それに私とゼロ。ふ、二人が良い」
耳を少し赤く染めてアレーヌは告げる。……そこで恥じるんだ。こんなにガッツリと僕のことを抱っこしておいて。
「ふたりきりなら良いんだよね?」
「む?……うむ」
「じゃあ僕が魔法を使って運ぶよ」
僕は風魔法を発動させる。
風が起こり僕とアレーヌを優しく包み込む。
そしてそのまま風が僕らを運ぶ。
「おぉ。便利だな」
「でしょ?僕の自慢の魔法だよ」
複数人で移動する時はこの魔法が一番便利だ。
しばらく。
しばらく僕とアレーヌが雑談しながら進んでいると、遠くの方から
「きゃー!」
という悲鳴が聞こえてくる。
「行っこか」
「うむ」
僕の言葉にアレーヌが頷く。
魔法を解除する。
アレーヌが地を蹴り、僕は再度別の魔法を発動して。
地面がえぐれ、木々が吹き飛んでいく。
さっきまでのゆっくりな動きが嘘のようにとんでもない速度で移動し、視界がひらけ、大きな道に出る。
大きな道に見えるのはたくさんの人。
倒れた豪華な馬車。そしてその馬車を囲う数多の男たち。
馬車の近くで剣を構える騎士らしき男におそらく高貴な身分の者だと思われる男の子。
「『跪け』」
一言。
僕は一言言葉を告げる。
目の前にいたたくさんの人が一斉にその場で跪く。僕の言葉に従い。
魔言。
僕が自分で作った千を超える魔法の一つ。脆弱な人間に対する魔法。
言葉を聞いた人を強制的に従わせる魔法。
「さてはて。どういう状況なのでしょうか?これは」
僕は両手に炎を魔法で生成した状態で彼らに問うた。
アレーヌは僕の横に無言で立っている。
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