第27話
「だ、大丈夫か?……良し。今日は少し早めに眠りにつくとしようか」
「う、うん」
僕はアレーヌの言葉に頷いた。
アレーヌは一度決めたからの行動はかなり素早い。
ワインとワイングラスをちゃっちゃと片付け、寝る準備を整えて布団に入る。
その間わずか一分。
「じゃあ電気消すね」
「うむ」
僕はアレーヌの一言を聞いて部屋を明るく照らしていた魔法の発動を切った。部屋は暗闇に支配される。
「おやすみ」
「あぁ。おやすみ」
僕は挨拶を告げ、布団を被った。
「……んっ」
僕は暗闇に体を震わせる。
暗闇に対する漠然とした恐怖感。もう二度と自分が動けなくなるんじゃないかという謎の恐怖感を感じる。
その恐怖心を押し殺し、まぶたを閉じる。
まだ……まだ気絶するほど疲れていない。頭が痛み、視界がくらみ、まともに思考が出来ないレベルの寝不足でしかない。限界の末に眠るわけじゃない。
まだ寝れないだろう。しかし、もしかしたら。
ついさっき僕は頭痛を味わい、苦しんだ。そのダメージから案外ちゃんと意識が堕ちてくれるかも知れない。そんな期待を込めて僕は意識を徐々に闇へと落としていった。
■■■■■
暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い痛い暗い
僕は苦痛を味わう。
幻視する。
腕を。闇に染まった腕を。
動けない。何も出来ない僕の方へとゆっくりと。
しかし確実にその腕は迫ってくる。迫ってくるのを感じる。
その腕は僕の胸を越え、心臓を、脳を撫でる。ゆっくりと。
そして、その腕は僕に対して牙を剥く。
徐々に削っていく。
腕から、足から。その闇に染まった腕は僕の体を削っていく。皮膚を、肉を引きちぎっていく。
あ、あ……あぁ。
そしてのその腕の蛮行は心臓へと向かっていく。潰れる。
ナニガ?
シンゾウガ?
ボクガ。
■■■■■
「はぁ……はぁ……はぁ」
僕は悪夢から飛び起きる。体が震える。アレーヌを起こさぬように静かに息を荒らげる。怖い。怖いよぉ。
体がどうしようもないくらいに震える。暗闇に恐怖する。
寝れなかった。また、まただ。これを一体何度繰り返すんだ……。
もう眠れない。
僕の恐怖心が眠ることを拒絶していた。
「んっ……」
僕はアレーヌを起こさぬように慎重に起き上がった。
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