第26話

「ふぅー。上手いな」

 

 安宿の一室で僕とアレーヌは休んでいた。

 アレーヌは綺麗なグラスのワイングラスで最高級レベルのワインに舌鼓を打っている。アレーヌは貴族生まれの元騎士団長。こういう高いものをたくさん持っている。ちなみにこれらの品々は僕が魔法で持ち運んでいる。

 ゲームでよくある異空間収納を真似して作った魔法でいくらでも物が入る。容量は無限、時間は停止という明らかに法則から反している魔法だ。意味がわからん。なんでこんな意味わからん魔法が使えるのだが。

 この世界の理を完全に掌握して、自由自在に世界の理でも変えられるのか?


「お前も飲むか?」


 アレーヌが僕に向かってそう話す。


「いや、大丈夫」

 

 僕はその申し出を断る。ワインとか他人のゲロと同意。実際にワイン飲んでも、他人のゲロを飲んでも味は同じだからな。

 全部ゴミ。この世のものじゃない。


「……そうか?私一人で飲むのも味気ないんだが」


「ごめん。僕はの……いっつ!?」

 

 僕は頭を押さえる。

 頭に走るのは激痛。頭にグツグツに熱しられた鉄の棒を頭に突っ込まれ、それで脳内がシェイクされているような錯覚を覚える。


「ぐぅぅ」

 

 僕は蹲り、頭を押さえる。

 痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い

 

「だ、大丈夫か?」

 

 いきなり蹲った僕にアレーヌが近づいてきてくれる。

 ……ありがたい。


「う、うん」

 

 僕はなんとかその言葉に頷く。


「はぁはぁはぁはぁ」

 

 僕は息を荒らげる。

 気持ち悪い。視界がくらむ。

 はぁー。ミスった。つい飲み物は全て不味く感じるんだ。って言おうとしてしまった。僕が食べれないのも、飲めないのも、眠れないのも、勃たないのも全て言えないのだ。それが僕に課せられた謎の制約なんだ。

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