第21話

「よし。じゃあ帰るかー」

 

 僕は古龍の死体を魔法によって浮かべてアレーヌに向かって告げる。

 

「うむ。そうだな」

 

 僕とアレーヌが帰ることに決めた。その時、地面が大きく揺れ始める。

 そして、地中から巨大な気配と魔力が登ってくるのを感じる。

 ……何だ?何が近づいてきているんだ?


「お?まだなにかいるのかな?」

 

 僕は飛行魔法を使い、空へと舞い上がる。

 アレーヌも大きくジャンプして僕よりも速く天空へと昇っていく。

 

 ドゴンッ

 

 大きく地面を陥没させ、一つの巨大な存在が姿を現す。

 

「おぉー」

 

 僕はその存在を見て歓声の声を上げる。

 地面を突き破り姿を現した存在。それはまさしく龍であった。

 体は大蛇に似て、背に八一の鱗があり、四足に各五本の指、頭には二本の角があり、顔が長く耳を持ち、口のあたりに長いひげがあり、喉下に逆さ鱗を有する。

 そう。完全に龍だ。

 黄金の鱗を持ち、圧倒的な輝きと魔力を見せる龍がそこにいた。

 口から炎が漏れ出していく。


「なるほど。これが古龍か。これこそが古龍だったのか!」

 

 さっきのはおそらく古龍でもない。まがい物の存在だったのだろう。

 僕は魔法によって浮かべたドラゴンをポイ捨てし、本物の古龍へと意識を向ける。

 

「今回はゼロに譲ろう。さっきは譲ってもらったしな。私は天剣を使わせてもらったからな」


 僕が飛んでいる場所まで落ちてきたアレーヌが僕にそう言ってくれる。


「お?本当?ありがと」

 

 僕はアレーヌにお礼を告げ、古龍の方を見る。

 アレーヌはゆっくりと落ちていく。

 

「ふー。やろうか。古龍」

 

 僕は好戦的な笑みを浮かべる。

 食も、睡眠も、性欲も奪われた僕にとってこの世界を生きる唯一の楽しみが戦いだ。二次元でしか見ること無い魔物たちと戦う。それが僕に最後に残された娯楽なのだ。

 久しぶりの大きな戦いを前に僕は心を高ぶらせる。


「うぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 古龍の口から空気を震わせる大声を上げる。……へぇ。龍の鳴き声ってそんなんなんだ。


「ふふふ。頑張って僕と戦ってよ?」

 

 僕は内に秘めた膨大な魔力を解放して、笑った。

 ちなみにだけど、空を飛べないアレーヌは僕がそんなことを一人で呟いている間も落下を続けている。

 

 ドゴンッ

 

 そして、龍が地面より出てきたことでボロボロになっていた地面に追い打ちをかけ、山が崩れていった。

 アレーヌは山に押しつぶされているが、まぁアレーヌなら全然平気だろう。

 僕はアレーヌを意識の外へと追い出し、古龍へと視線を向けた。

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