第20話

 アレーヌが地面を蹴る。

 それだけで大地がえぐれ、クレーターが出来上がる。

 

「ハァ!!!」

 

 目で追うのが困難なほど凄まじい速度で突撃したアレーヌは古龍へと斬りかかる。

 そして、あっさりと古龍の足を切断した。

 アレーヌが持っている大剣はかなりの大きさのものだ。しかし、古龍の太い足を切断出来るほどではない。

 だが、切断した。意味がわからないが、アレーヌだ。そういうこともある。


「ガァ?」

  

 何の反応も出来なかった古龍。わけもわからぬまま崩れ落ちていく古龍。

 だが、腐っても古龍。そのまま無反応で何も出来ずに死ぬほど弱くはなかった。


「ガァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 古龍は口を大きく開く。

 そこから放たれるのは炎のブレス。

 空間を歪めるほどの熱を持ったブレスをアレーヌに向けて、洞穴全体を燃やし尽くさんばかりに放つ。

 

 山に空いた洞穴は地獄のように炎を吐き出す。

 

 まるで噴火みたいだな。まぁマグマも煙も軽石も出ていないけど。


「ふん!」

 

 そんなブレスだが、アレーヌには何の意味もなかった。

 アレーヌはブレスの中平然とした表情を見せ、進んでいく。

 そして、再び刀は振るわれる。


「ガァ!!!」 

 

 アレーヌの一撃を古龍は自身の防御力を上げる魔法を使ってなんとかアレーヌの一撃を耐える。


「ふむ。思ったよりも硬いな。次はもう少し力を込めて殴るべきか」


「ガァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 古龍は慌てて体を大きく揺らす。自分の近くにいるアレーヌを吹き飛ばすように。


「ふむ」

 

 アレーヌは少しだけ後ろへと探す。

 その瞬間。

 

 バサッ 

 

 古龍は飛び立つ。逃げるように。上へ上へと。古龍は逃げ出したのだ。


「ガァ」


「ん?」

 

 上へ上へと登ってくる古龍の視線と僕の視線が交差する。


「僕じゃない。下だよ」

 

 僕は僕に向かってブレスを打ってこようとする古龍にそう告げ、下を示す。

 古龍の下。大地の上に立っているアレーヌは大剣を構えていた。

 大剣に膨大な魔力を流して。


「行くぞ」

 

 大剣の刃が魔力により大きく伸びる。光り輝いて。

 まるでそのさまは聖剣エクスカリバーのようだ。


「天剣」

 

 アレーヌが大剣を振り下ろす。

 

「ガァァァァァァァァァァァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアア!!!」

 

 アレーヌの一撃はあっさりとドラゴンを両断し、ドラゴンは地へと堕ちていく。


「よっと」

 

 僕は堕ちていくドラゴンのうえに乗り、そのままアレーヌがいる地上へと降りた。


「おつかれー」


「うむ。久しぶりに天剣を使えてすっきりしたぞ」

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